St.R @230


「あん…ん、…清麿くん…私、はぁ、もう…我慢できない…」
恵の控え室。衣装を汚さないようにスタンドバックの体位で、恵と清麿は頂点に達しよう
としていた。恵が歴史のある生放送の番組に出演するので、清麿が応援がてら様子を見に
来たのだが、当の恵がいつも出演している番組と違うスタジオの雰囲気に呑まれ震えてい
たため今は励ましていた。
「オレも…もう…」
清麿は腰の動きを止めるとうめいた。恵も上半身を仰け反らせて、内に広がる清麿の温か
さに酔いしれる。二人は仲良く一緒に絶頂を迎えた。
「はぁはぁ…、ありがとう、清麿くん。もう大丈夫だから」
頬を紅潮させ瞳を潤ませる恵は、清麿の耳元で吐息まじりにそう囁いた。清麿は恵の囁き
声に急に恥ずかしくなってくるりと背を向けると、自分のモノをしまった。
「オレ、もう行くよ。スクープでもされたら恵さんに迷惑がかかるし。今日のテレビ、ち
ゃんと見るから」
「うん。今日は本当にありがとう」
清麿はドアをかすかに開けて人がいないのを確認すると、すばやく控え室を出た。恵は清
麿以外の人の気配を伺ってみたが、そんな様子はない。
「ふぅ。こういう時アイドルってつらいな。…さて、私も急いでメイクとヘアセットをや
り直さないとね」
恵は鏡に映る幸せそうな自分の姿をまぶしそうに見つめた。



「恵ちゃんでもそんな失敗するのねぇ。おほほほほほほ」
「そんなに笑わないでください。恥ずかしいです」
対談形式の番組は滞り無く進行していった。極端なほど膨らんだ進行役のヘアスタイルに
視線がいきそうになるのを堪えるのは結構な努力を要したが、恵はリラックスした気持ち
で自分らしさを見失うことなく仕事に臨むことが出来た。
(これも清麿くんのおかげ…よね)
恵は清麿と一つになったあの高揚感を思い出すと、とたんにジワリと温かいものが股間に
溢れてショーツを濡らした。恵は慌てて清麿のことを頭から振り払い仕事に意識を集中さ
せた瞬間、進行役が思わぬことを口にした。
「恵ちゃん、まろ…って何かしら?」
「えっ!まろって…?」
急に恵の鼓動が早鐘を打ち出した。進行役の話によると、恵は無意識に清麿の名を口にし
てしまったらしい。ただ声が小さかったため、『まろ』の部分しか聞き取れなかったようだ。
恵は内心、焦った。はっきりと清麿の名を口にしなかったのは不幸中の幸いだったが、オ
ンエア中なので下手に会話を遮断させたり変えたりすることは出来ない。考えている時間
は無かった。恵はとっさにこう答えていた。
「実は最近、マロニーに凝ってまして……・・・」

次の日から恵の所属事務所に、ファンからのマロニーが大量に送られてきたことは言うま
でもない。


                               終

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