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「ティオとガッシュは?」
「ぐっすり眠ってるわ。長旅が疲れたみたい」
「ふぅ俺も疲れたよ……」
「ふふ。お疲れ様」
心底疲れたという口調で清麿がぺりぺりぺりと付け髭を剥がす。
続いてワイシャツの中に入れていた詰め物も取り出していく。
ナゾナゾ博士にチケットを用意しては貰っていてもガッシュとティオは
魔物とはいえ外見上は子供で清麿と恵ですら未成年で、それも実年齢より
若く見られがちな日本人である。
子供4人で南米に向かうのは危険だろうとリスクを最小限にするため
恵と清麿が夫婦でティオとガッシュが子供の4人家族を装うために
変装していたのだった。
「しかしさすが恵さん。演技がうまい」
清麿は心から感心する時折本当に20代後半の女性なのではと思ったほどだ。
「清麿くん?褒め言葉として受け取っておくけど……。女の子はね若く見られたいものよ?」
茶目っ気たっぷりに恵が答えた。
「あ、ごめん」
「ふふ清麿くんってほんとにまじめなんだから」
「め、恵さん、からかうなよ……」
「あはは拗ねちゃって、かわいい」

こうなっては天才的頭脳も形無しであったる。
「そ、それじゃ俺毛布でソファで寝るから恵さんベッド使ってよ」
「あら?夫婦なんだしいっしょでいいじゃない?」
「も、もう恵さん……」
「ねぇねぇ、清麿くんは最初私見たときどうおもったの?」
「え…そんなの……この人が有名なアイドルなんだなって…」
「う゛〜それだけ?」
明らかな不満顔で清麿をにらみつける。
「私は……清麿くんいいなって思ったよ。まじめでつよくて……やさしくて……」
「恵さん……」
恵がすっと立ち上がる。
「清麿くんだったから……こんなところまで付いてきたんだよ」
近づいてくる恵に清麿は動けずにただ恵をみていた。
その顔が息がかかるほどに近づく。そして唇が触れ合った。
柔らかく温かい恵の唇。そして恵の手が清麿の首にまわされだきしめられる。
さらに押しつけられる唇。高鳴る鼓動がまるで耳のそばで鳴ってるかのように
冷静な思考をさせなかった。いつの間にか清麿もその細い恵の体を抱きしめていた。
どちらからともなくお互いの舌をもとめ絡め合う。濃厚なキスを繰り返しつつ
そっとベッドに倒れ込む。長い長い長いキスの後、ゆっくりと顔を離す。見つめ合う二人。
「恵さん……」
「清麿くん……」
そして二人はむつみ合う。互いの絆をより強く感じるためにより深く感じるために……。

「ねぇ博士なんであの二人を先に行かせちゃったの?」
「ハハハハハ。キッド、それはね人の心ってのは
守ろうとするものがあればあるほど強くなるからだよ。
そしてそれが近くにあればなおさら……ね」
「そうなの?」
「私はなんでもしってるナゾナゾ博士さ。信頼しあってる絆は二人を先に行かせることでより強い絆になるのだよ」
「すごいや博士!なんでもお見通しだ!」
「それにあの二人も南極からなら丁度同じくらいに南米に着くだろうからね」
「うん!」
「それでは以降か我々も早く追いつかねばならない。強力な仲間を連れてね……」

そして彼らは集まる。同じ思いの元に。


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