77@世歩歩 @661


山のように積まれたファンからのプレゼント。アイドル大海恵の人気の高さの程が伺い知れる。
花束やファンレターは勿論の事ぬいぐるみやアクセサリー、
中には調理器具まであったりと一口にプレゼントと言っても様々だ。 そう、中にはあんなものまでも…


― コンサート会場・「大海 恵」控え室
コンコン。 ドアをノックする音にドキッとして、あわてて返事をする恵。
「…は、はいっ!」
「恵ーー、そろそろ出番よ。…ワァ〜〜〜、素敵!」 ティオが目を輝かせながらはしゃぐ
「うーん…でもちょっと恥ずかしいかな?」
今回の衣装はロック系の新曲に合わせたもので、デザインしたのはかの有名なM・リック。
大きく開いてる胸元の周辺には細かいレースとフリル、そしてエナメル素材のミニ…
可愛さを残しながらもセクシーさが強調されている衣装、といえなくもない。
「ううん、とっても似合ってるわよ。それより恵、なんだか顔が赤いわよ?」
「そ、そう?。き、気のせいよ気のせ…ひぅっ!」
「どーしたの恵!?」 
ティオが心配そうに恵の顔をみつめる。
「な、な、なんでもないわ。ちょっと…しゃっくりが出ただけだから」
「もぉー、ビックリさせないでよ恵っ」
「きゃう…ッ!!」
ティオが恵のお尻をポンと叩くと、恵は素っ頓狂な声を出した。
「恵、しゃっくり止まらないの?」
「い、今ので止まったみたい。……じゃ、がんばってくるわね」
「うん!、魔物の方は私にまかせて」
何か引っ掛かるものを感じながらも、元気一杯の笑顔で恵を送り出すティオ。


コンサート開始から約2時間後
今の所、魔物は来ていないし来る様子もない。
ティオは念のためステージの隅からも会場全体を見渡してみたが、魔物らしき姿はなかった。 
コツン
何かがつま先にあたりティオが足下を見ると、小さなピンク色のケースが落ちていた。
「!?。なんだろーこれ、スイッチが付いてる…」
カチ カチッ
ティオはとりあえずスイッチを押してみた。
ON OFF、強 弱のスイッチがでたらめに押される… 

・・・OFF 弱 弱 強 OFF、ON 強 弱 強 弱、強 強 強 OFF ON・・・

スイッチを入れてもソレじたいにはこれといった反応がなかったので、
ティオは不思議に思った。
「変なのー…、壊れてるのかしら?。えい! 」 
パキッ
「・・・・・・!!」
キョロキョロっと周りを見た後、 手に持っているものを素早くポケットにしまう。
…も、もしかしてコンサートの演出に使う道具だったのかもっ!?
ど、ど、どうしよーーーーー!?!?

ティオは考えに考えた末、後でこっそり捨てる事にした。


ステージ上では恵が笑顔を絶やす事なく歌っていた。 あくまでも表面上は
しかし事体は急変する。

『や!!?…な、何で…っ!?ぁぁ…ぃゃッ……んっ!!?…く…ぅ…ぅっ』
ファンの視線が注がれる中、
快楽の渦に呑み込まれまいと必死で抵抗する恵。 
『ぁ…こッ…声が…ぁっ!ぁっ!?…だ…め、だめだめだめぇ…ぇぇ
…っちゃう…また、い…ぃッちゃ……ぅんッ!!?、んん!!…んぅんッ!!!』

一曲歌い終わる度に身体をわななかせては、ビクンと腰をくねらせる。
苦悶の表情を浮かべ、腰に腕をからませたり
指の先までピンとのばす仕草や艶のある歌声は、観ているものを魅了するには十分すぎるほどだった…
会場のボルテージは最高潮に達し、さらにメグコール一色へと染まる。
が、一方それを観ていたティオはというと、
明らかにいつもと様子が違う恵の事を本気で心配していた。
「今日の恵、さっきもそうだったけど…絶対変よ。やっぱり無理してたんだわ」
…恵、最近疲れてるようだし、
うーん何かリラックスできて元気づけてあげられるものは……
「!!。そうだわ、遊園地なんかいーかも!?。
それに、たしかモチノキ町にも遊園地があったはず。 くふふっ♪」


― コンサート終了後
「恵、お疲れさまーー! わっっスゴイ汗。はいこれ」
ぐったりした恵が息も絶え絶えにティオからタオルを受け取る。
「…はぁ…はぁ…はぁ…、ん… あ、有難うティオ…」
ティオは早速遊園地の件を切り出そうとしたが、 疲れきった恵を見ると今は言うに言えなかった。
「!?。アラ?」
「はぁ…はぁ……どうしたの…ティオ…?」
「うん、さっきから変な音がしてるから気になって。ぶーん.....って虫みたいな音」
「(ビクッ!) そっ、そう…ね…。はぁ…はぁっ…はぁぁ…ぁ」


会場から、まだ興奮覚めやらぬ様子のファン達が出てくる。 
「新曲よかったねー! 。今日のメグ、何だかいつもより色っぽくなかった!!?」
「うんうん、それにあの声。嗚呼もっと早くからファンになっておけばよかったなぁ」
「ん〜、でも所々とちったりしてメグらしくなかったような…?」

ツルッ スッテーーーン!!
ステージ上の機材等を片付けていたスタッフのひとりが足を滑らせ転倒した。
「おわっ!、誰だよこんなとこに水なんかまきやがっ…ネチャ…あれ、水じゃないや…!??」
…はははっ、まっさかねー!。


【E N D】

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