名無しさん@ピンキー @788
「ねぇ、清麿?」
「……」
「ねぇってば!」
「……へ?あ、あぁ」
ハッとして返事をする。
「聞いてた?」
「何を?」
ティオがため息をついた。そして「もう…」と言ってプイっとそっぽを向いてしまった。さすがに清麿も、やってしまったと思ったことだろう。
「清麿、さっきからボーとしてばっかなんだもん!」
「いや、スマンスマン、ティオ」
ごまかすようにハハッと笑いながら謝った。
「やっぱり恵が来なかったから?」
これにはさすがにドキッとした。まさしくその事について考えていたからである。
ティオの計画でみんなで旅行に行こうという話になったのだが、恵に急な仕事が入り、ガッシュは熱を出してぶっ倒れるという始末になってしまった。
本来ならそこで中止になるはずなのだが、ティオのどうしても行きたいという熱望により計画を決行するハメになった。
「つまんない?」
「いや、そんなことはないさ」
「でも…」
今度は申し訳なさそうな顔をしている。
「悪い悪い!ちょっと考え事をしていただけだよ」
「うん……」
「ほら、オレもティオといると楽しいからさ」
「ホントに?」
「あぁ」
ティオが嬉しそうにニッコリと微笑む。ころころと変わる表情に思わず笑みがこぼれた。
男女二人で一泊二日の旅行。特に問題はない。ただこの場合は違った。問題は……
「なに?」
「いや、なんでも」
この年の差はなんとかならないものだろうか。
(これではまるで……)
「あら、お嬢ちゃん、お兄ちゃんと遊びに行くの?」
(へ?)
話し掛けてきたのは隣に座っていた初老の女性だった。子ども好きと見える。
「うん。清麿に連れてってもらうの!」
「そう。よかったわね〜」
不思議と好感の持てる女性であった。
どうやら端から見ると兄妹に見えるらしい。それもそうだな、と一人納得する。
ティオと行動するのも悪くはない。ただ、やはりこの前の“こちょこちょ”の事があってか、罪悪感を感じ、深く考え過ぎてしまう。
(まっ、大丈夫だよな)
そうこうしているうちに、目的の駅についた。
日本では割と有名な方にあたる遊園地にやってきた。なかなかに広く、一日で回るのは多少キツい。また、何本か電車を乗り継がなくてはならないので一泊二日という事になったのだ。
「清麿!早く行こ!」
今にも走り出しそうな程うずうずした様子のティオだった。これを見ると、来た甲斐があったなと思える。
「よし、じゃあ気合い入れて行くか!」
「うん」とティオが頷き、清麿が手を引っ張られる形で二人は走って行った。
コーヒーカップ、メリーゴーラウンド、ジョイプレーン……なんだかよくわからないものも多かったが、相当数のアトラクションに乗った。
終始ティオは楽しんでいる様子であった(なかでもいわゆるお化け屋敷では怖がるかと思いきや、キャーキャーと叫びながらお化けを蹴っ飛ばしたり、首を締めたりとかなり無茶な事をしてくれた)。
日が暮れ始めた頃でも、まだ半分程度の乗り物しか乗れていなかった。
「ティオ、そろそろホテルに行こうか」
「え〜」
清麿はもうすっかり疲れ果てていたが、ティオはまだ遊び足りないと見える。
「ほら、明日もあるから」
「じゃああと一つだけ!お願い!」
やれやれという様子であと一つ、お子様用のミニコースターに付き合った。
部屋に入るやいなやベッドに倒れ込む。
(疲れた……)
横目でティオの方に一瞥を投げると、彼女はベッドの上でバインバインと跳ねていた。まったく、こういうときの子供の体力は恐ろしい。
(風呂入らなきゃな……)
一応、このホテルには大浴場があった。そこに行こうかと思い、ベッドで跳ね回るティオを引っ捕まえる。
「ティオ?お風呂行こうか?」
「どこの?」
「ここの大浴場」
「……ヤだ」
「へ?なんで?」
「一人じゃ恐い」
そんなもんなのかな?と納得しておく。仕方ないのでためらったが
「じゃあ男湯に…」
「それは絶対嫌!」
思いっきり拒否された。
「じゃあどうする?」
「そこのでいいじゃない」
ティオの視線を追うと備え付けのバスルームが目に入った。
「そうだな。じゃあ、お湯を張ってくるから」
「うん」と二つ返事が返ってくる。
バスタブの蛇口を捻ってお湯を入れた。それだけですることが無くなった。
部屋に戻るとティオはテレビに見入っていた。こうしてみると本当にただの子供のように見える。いや、実際子供なのだが。
清麿はすることもなく、仕方がないのでティオと一緒のベッドに寝っ転がり、なんとかとかいうアニメを見ることにした。
何というわけでもなくボーっと画面付近を眺めていると、不意に膝あたりに感触があった。
見るとティオが膝にチョコンと座ってテレビに見入っていた。スカートが拡がっているので、ちょうど今ズボン越しにティオの下着があたっていることになる。
可愛いらしい女の子と二人きり。少し、悪戯心が魔を射した。
膝に乗ったティオの脇に手を入れ、身体を持ち上げ、伸ばした右膝に跨がらせた。相変わらずテレビに熱中しているティオは抵抗しない。
ついで、肩を引いて少し前のめりにさせる。ゆえに自然と清麿の腹部あたりにティオは手をついた。
今、ちょうどティオの秘所が右の膝頭にあたる格好になった。無論ズボン越しにではあるが、やはり興奮する。
少し揺すってみた。ティオは相変わらずテレビに夢中といった感じで気にしない。
調子に乗って、今度は膝を少し立てる形で突き上げてみた。
「キャ!?」
小さく悲鳴をあげ、キョトンとした顔付きでこちらを見てきた。清麿は無論、我関せずといった感じでテレビを見ているふりをした。
膝を震わせ、ティオを刺激する。ティオは頬を赤らめ、うつむいていた。どうやら“恥ずかしいこと”とは認識しているらしい。
時折、少し膝を持ち上げてやると、股間を突き上げられ、逃れようとしたのかビクンと身体を震わせる。
「…ねぇ、清麿……」
ティオが声を掛けてきた。その表情を窺うと、もじもじしながら何か言いたげに訴えていた。
「なに?」
あくまでとぼけながら聞き返す。
「……なんでもない」
またうつむいてしまった。
十分程経ったろうか。さすがに膝を動かすのもキツくなってきた。
ティオは一応テレビの方に目を向けているが、明らかに見ていない。膝で愛でてやるたびに、その小さな手でギュッギュッと清麿の洋服を掴んでいた。
時折見せる、苦悶の交じった表情には狂おしいほどに惹かれる。
「…清麿ぉ……」
ティオが切なげに訴えてきた。
「どうした?」
「あの…その…」
清麿が怪訝な顔付きをする。
「こ…こちょこちょして……」
思わず吹き出しそうになってしまった。まぁ、清麿としては願ってもないことだが、少し意地悪をしてみたくなるのも男の性だろう。
言われた通り、「脇腹」をこちょこちょしてやる。
「あ!ち、違うの!」
「何が?」
「そこじゃなくて…」
「どこ?」
「こ…ここ……」
視線を逸らせて、恥ずかしがりながらも股を指さす。
「口で言わないとわからないよ」
なお意地悪くしてやると、ティオが恨みがましい目をした。
「お…また……」
「ほら、はっきりと」
「……」
ティオの表情が困ったようなそぶりを見せたかと思うと、だんだんと歪んでいった。
みるみるうちに、今にも泣き出しそうな情けない顔になってきた。
「わぁーーー!わかった!わかった!スマン、ティオ!もう意地悪しないから!」
よっぽど恥ずかしかったのだろうか。泣いてはいないものの、少しヒックヒックという鳴咽が洩れている。
清麿は上体を起こし、おそるおそるティオのスカートに手を伸ばした。スカートの中に手を入れても、抵抗はしない。
ティオの腿の熱で、中は独特に熱が篭っていた。内腿の付け根に手の端が触れ、そのまま下着に触れる。綿生地の布越しに、ティオの体温が指先に伝わってきた。
少し、下着の上から指先を割れ目に押し込むように撫でてやると、キュッとしがみついてきた。顔も胸元に埋めてくる。
空いている左腕でティオの小さな肩を抱き、そのまま後方に倒れた。
ティオの顔が首筋にきて、指先を動かす度にいちいち熱の篭った吐息がかかる。
身体が清麿の体の上に俯せているので、前からでは少し“こちょこちょ”しづらい。なので、ティオの腰に手を回し、スカートを捲くり上げた。
「うぇ?」
顔を洋服に埋めているので、呻き声に似た驚きの声が洩れる。が、構わずその小振りな桃のような尻を撫で回した。
「ひぅ…やぁ……」
ギュッとさらに身体を縮込ませ、スカートの裾を後ろ手に押さえ、抵抗を示した。
「ほら、スカート押さえちゃったら“こちょこちょ”しづらいよ」
「だってぇ……」
俯せていた顔を上げたため、意識してのものではないだろうが少し上目遣いに哀願して来た。
こうこられては清麿としてはどうしようもない。仕方なしにそのまま続行することにする。
ティオの後ろから恥部に触れた。くにっと指を押し込むように撫でてやると、ティオの身体が一際ピクンと跳ねて、せり上がってくる。
下着の上からその触感を楽しむように、何度も何度もクニクニと弄ぶ。そのたびにティオは小さく震え、フッフッと細かく吐息を洩らしていた。
可愛らしいウサギが刺繍された可愛らしい下着に、手のひらを忍ばせる。
プルンという擬音は無いが、例えるなら赤ん坊の頬のように凛として滑らかな肌の感触が指先を通じて伝わってくる。
予想通り「キャ!」という悲鳴があがり、スカートの裾を押さえていた小さな手が、清麿の手首を後ろ手に探り当てて押さえてきた。
構わずティオのお尻を撫で回す。
「ヤ…ヤだっ…清麿…」
顔を上げ、後ろ手に清麿の手を押さえようとしながら後ろを振り向き、確認しようとする様が、なんとも滑稽で可愛らしかった。
手のひらをどんどんと進めていくと、さらにティオの熱が伝わってくる。
名残惜しくティオのお尻に別れを告げ、待望の女の子に触れる。今まで動くことはしていたものの、跨がるようにしていたティオの脚が、ピンと張って指先を締め付けて来た。
ティオの手はもう清麿の手首を押さえることは諦めて、清麿の洋服の胸元をギュッと無造作に掴んでいた。
指先は窮屈な状態ではあったが動かすことは出来た。他とは違う一段と柔らかな感触を中指でなぞる。
「ふぇ……」
股間の刺激に敏感に反応し、顎を持ち上げ鳴く。埋められていた顔がさらけ出された。しかし、清麿の視線に気付くと恥ずかしそうにして、すぐにまた顔を埋めてしまう。
まだ熟れていないティオの女性器は新陳代謝による汗なのか、湿り気があった。
性的刺激による分泌液も多少なりとも出ていたが、まだ未成熟なために濡れるという状態までにはいかない。
その微妙な湿り気のために、指先に柔らかい肌がしっとりと絡み付いてきた。
ただ、ティオの女の子に指を置いているだけ……。それだけでも、ティオは呼吸を乱していた。
少し指を動かすだけで腰が踊り、キュッとしがみついてくる。
「ティオ、顔を見せてみな」
まだ幼いティオの、恐らく恍惚しているであろうその表情が見てみたくて、声を掛けた。
だが、ティオは相変わらず顔を埋めたまま首を横に振る。振り乱れた髪が清麿の頬を叩いた。
「どうして?」
「だって、清麿に見られると、なんだか恥ずかしいんだもん……」
ここまでやらせといて恥ずかしいも何もあったもんじゃないだろう。それに……隠されると余計に見たくなる。それは清麿も同じだった。
両手をティオの両脇に差し込み、半ば強引にひっぺがす。「キャァ」という悲鳴があがったが気にせずに、今度はあお向けにさせた。
「ヤだ…恥ずかしいよぉ……」
「大丈夫。可愛いよ」
歯の浮くような清麿の台詞だった。
ティオは耳まで真っ赤にし、今にも湯気が出そうなほど赤面していた。
下着の上から擦ってやると、何かに耐えるように瞳をすぼめ首を振る様が欲情をそそる。
スカートをたくし上げる。無論下着が現れ、形の良いへそまでもさらけ出された。
ティオの手がスカートを押さえようとするそれより一瞬早く、清麿の指が下着にかかった。
触感を頼りに割れ目に沿ってなぞる。
「ふぁ……」
笛の壊れたような声があがった。その瞳は半ば虚ろにどこかを見ている。
手探りの中、未熟な割れ目を開き、小さな突起を中心に撫でていくと、裾を押さえる手が落ち、脚がだらしなく開いてきて、為すがままのような状態になってきた。
「気持ち良いの?」
「ん…ちが、違うもん…」
どこかぼーっとしながら答える。既に彼女の身体は、くすぐったさと、それを上回る気持ち良さでどうにもならないでいた。
プニプニとした突起を弾くと、それに合わせてピクンと震える。
強めにグリグリとティオの女の子を撫で回すと、一瞬呼吸が止まり、腰が小さく引く。
そして、手を緩めると溜息をついた。
呼吸の乱れや、時折あがる「んッ……」という声で、ティオが一人前にも感じているのがわかる。
「ティオ、舐めて」
「え?」
眼前に差し出される指。訝かしげにティオが見つめる。
「な、なんで?」
「いや、このままだとまた痛くなっちゃうから」
「でも…だって…」
一呼吸の間。
「私の…おまた触った……」
どうやらやはり自分の身体とは言え、“おしっこが出るとこ”としか認識してなかった部分には抵抗感があるらしい。当然と言えば当然ではあるが。
「大丈夫だよ」
清麿が舐めてみせる。だがティオは顔を背けるだけだった。
「じゃあ、また痛くないように直接オレが舐めて“こちょこちょ”するけど…?」
「そ…それは……」
恥ずかしそうにうつむいてしまった。
微妙な沈黙の後、やがて観念したかのように眼前の清麿の手を掴んだ。
恐る恐るといった感じで、小さく突き出した舌でペロッと舐める。柔らかい舌の感触が指の腹を走った。
一度舐めてしまえば、あとはもう…といった感じなのか、ぎこちなくも舐め始める。
「んむぅ!?」
人指し指と中指とを強引に口に含ませた。一瞬、目を剥いて驚きの表情を見せたが、次第に元の虚ろげな表情になり、口内の侵入物を舐め始めた。
「ふ…んむぅ……ん…」
その間も残った左手で、下着の上から擦り続ける。口腔に指が入ったためか、口端から息とも喘ぎともつかない声が洩れやすくなっていた。
一所懸命に指をくわえ舐め上げる様は、どこか幼児的で、どこか官能的で、幼さと大人っぽさが交じった不思議な顔だった。
充分に舐められ、ふやけたような感覚になったので、口から指を強引に引き剥がす。
「あっ……」
名残惜しそうな顔。それを無視して下着に濡れた指を潜り込ませた。
唾液を摩り込むように、割れ目の中を何度も往復する。
「ふぃぃ……」
なんとも情けない声がティオから洩れた。
左手を柔らかい唇に当ててやると、意図を汲み取ったのか、両手で抑えて口に含んだ。
股間を動く右手に合わせて、時折その舐める作業が止まる。
右手の動きを少し強くしてやると、「んんッ…」と呻いて、一層に吸い付いてきた。
ティオの唾液が円滑油となり、未熟な女性器は独特の触感を持つ。滑らかで、それでいてどこか淫隈な感触が指を走った。
ティオは小さく身悶えをして、幼い快楽にただ、じっと耐えてるようだった。
赤ん坊が母親の乳首に吸い付くように、ティオは口元の清麿の指をくわえていた。
不安を紛らわし、気持ち良さに耐えるために吸い付く姿はまるで幼児だった。
それでいてどこか色っぽさを持ち合わせているから面白い。
右手の動きに合わせて、両手でひしと掴んでいる清麿の手をギュッギュッと握る。
何度か右と左とを換えたが、同様に反応を続けた。
五分程いじり続けていくと、段々とティオの呼吸が荒げてきて、指を舐める作業がおごそかになってきているのに気付いた。
「ティオ?気持ち良い?」
「ふぃ…もう、もう…」
乱れた呼吸で、返事をしようとするが、言葉にならないらしい。
可愛く思えてティオの女の子を一層にこね回した。
「あッ!ふぃぃ、ふぁ…んんッ──」
細く柔らかい太腿が、撫でていた手をギュッと股間に締め付けてくる。瞼が堅く閉じられ小さく背が反り返り、清麿の指をくわえたままで声を荒げた。
「──んんッ!きよ、清麿!清麿ぉ…」
全身がピンと張り詰め、その顔が切なげな表情を表した。
明らかに今までと違う反応に清麿は驚き、興奮しながらもティオの絶頂を察した。
しばらくティオはそのまま硬直した後、大きくどこか甘い溜息をついた。
前回は清麿自身も慌てて、動転し、よく観察できない内に終わってしまった。だが、今回はゆっくりとティオの余韻の一挙一動を観察する余裕があった。
額はひどく汗ばみ、桃色の前髪がへばり付いている。
その瞳はどこか虚ろで、頬は随分と紅揚していた。
口元は清麿の指を舐めていたため、唾液が口端から漏れ、ベタベタになっている。
呼吸も荒く、ティオの中での高揚を如実に物語っていた。
手足はダラリと脱力して、動こうともしない。
また衣服は乱れ、へそを越え胸の下程まで捲くり上がったスカートの裾が今までの行為を伝える。
クタッと脱力したティオの身体の中で、唯一胸部だけが呼吸に合わせ、せわしなく上下していた。
「ティオ?」
声を掛けると身体を翻して俯せに抱きついてきた。小さな肩が大きく躍動し、熱っぽい吐息が首筋を擽る。
「どうした?」
質問を投げ掛けても、ただただひしっと抱きついてくるだけだった。
なんだかその姿が可愛らしく思えて、ギュッと抱き締めてやった。
ティオの身体はひどく熱を帯びていて、抱き締めるとそれがより分かる。
しばし、6歳の女の子を14歳の男の子が抱き締める、というなんとも可笑しな光景が続いた。
次第にティオの荒い呼吸も納まり始める。しいて普段との違いを挙げるとすれば、時折大きく息を吸い、また大きく息を吐くぐらいだった。
「ティオ、もういいか?」
ティオはさらにギュッとしがみついてくる。
(参ったな……)
無理に降ろそうかと思ったが、下手をしたら抱きつかれ、持ち前の握力で背骨を折られそうな気がする。
なんとか納得させる手立ては無いかと思案したが、結局素直に言うのが早いと思った。
「ティオ、オレ、トイレ行きたいんだよ」
言うと、ティオの手が緩み、しぶしぶと……本当にしぶしぶと離れた。
「すぐ戻ってくるから」
不満そうな顔をするティオの額の汗を拭ってやり、そう声を掛けてから背を返した。
おもむろにトイレのノブに手を掛け、姿を消す。
その背中は、背後でティオが不安げな顔をして目尻を擦っているのに気付かなかった。
あのままではティオを襲ってしまいそうだった。まさか6歳の女の子相手にそんな事をするわけにはいかないだろう。そう考え、自制をしてトイレに逃げた。
もっとも、今までした事もやってはいけない事なのだが。
自身を落ち着かせた後、清麿は自分の洋服の胸辺りが特に湿っているのに気がついた。丁度ティオの顔があった辺りである。きっとティオの汗だろう。そう思うと不快ではなかった。
「さて…」
特に誰に声を掛けたわけではなく、そう呟いてその場を後にした。
───清麿は胸元の湿りに“涙”が交じっていた事には気付けなかった。
「ティオ?」
ご機嫌を伺うように声を響かせた。
だが、ベッドにはティオの姿は認められない。
不意に左手に感触が一つ。控え目に手を取ってきた。
「ど、どうした?」
いつもと違う様子に清麿は少し戸惑う。腰を落としてティオの視線の高さに合わせてやると、うつむいたまま首に腕を回してきた。
「お、おい、どうしたんだよ?」
「……なんでもない」
日頃からあまりこどもこどもした所が無いと思っていたが、なるほどこんなにも甘えてくる事もあるのか、と半ば感心しながら抱き上げた。
「ティオ、随分汗かいちゃったな」
ティオの腰に回した腕から、じっとりと湿った感触が伝わってくる。
「ん?そういや、汗と言えば……」
不意に過ぎる嫌な予感。部屋には微かに響く水音。
ティオを抱えたまま、バスルームを覗く。
予感的中。
「わぁ」
「やっちまったな」
二人は顔を見合わせた。その前には、並々と貯められたお湯が今にも零れんばかりに……いや零れていた。
ティオがにこやかに微笑む。それにつられて清麿も。
いつしか笑い声がバスルームに反響していた。
湯を止めて、部屋に戻る。
突飛な思い掛けぬハプニングに、ティオは元の明るさを取り戻したように見える。
まさか、水道料金を払え、と言われることもないだろう。清麿はこのハプニングに感謝したぐらいだった。
「ティオ?お風呂入るか?」
「うん!」と大きく頷いて、バッグから着替えを取り出して来た。
そして、清麿の前に立つ。
「どうした?」
「早く行こ」
この時の清麿の顔を言い表すのはなんとも難しい。口は大きく開き、目が点となり、間抜けという三文字がよく似合う。
「え、ど、どうして?」
調子外れな声が問い掛ける。
「だっていつも恵と入ってるよ」
頷くしかなかった。
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