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「爺!ブラゴはまだもどらないの!?」
「ええ、まだでございます。」
「もういいわ。ちょっと探しに出てくる!」
そう言ってシェリーは本を手に取った。
「お嬢様。もうじき日が暮れますゆえ、お気をつけて。」
外に出たシェリーは、勘で足を運ぶ。
この街のはずれには海岸がある。おそらくブラゴはそこにいるはずだ。
しばらく一緒に過ごしてきた事で、相手の行きそうなところは
だいたいの察しがつくようになっていた。
果して海岸に着くと、そこにいつもの黒い影を確認する事ができた

「ブラゴ!」
「…なんの用だ」
駆け寄ったシェリーに対し、あいかわらず不機嫌そうな声を出すブラゴに
シェリーは本を開いて見せた。
「これ!さっき文字が浮かび上がったのよ。魔物の子があと40人になったって!」
「フン、そうか」
もとより、喜ぶブラゴの姿を期待していたシェリーではなかったが、
相変らずの態度を示すブラゴにいつもの憎まれ口もたたきたくなる。
「あなたね…。せっかくこうして知らせに来てあげたのに、何なのその態度は!」
「お前が勝手に来たんだろう?それに俺たちが倒してきた魔物の数を
 考えれば、もうそろそろそのくらいの数に減ってきてもいい頃だ」
「まあ、それもそうだけど…」
くちごもるシェリーに背を向け、ブラゴはすたすたと歩き始める。
「ちょっと!あなたまだ帰らないの!?」
「ああ、もう少しここにいる。お前は先に帰ってろ」
(なによ!せっかく来てあげたのに!…まあいつものことね…)
ホテルに戻ろうとしたシェリーの顔にふいに光がぱぁっと降り注ぐ。
ふと見ると、夕日が水平線に沈もうとしているところだった。

(きれい…)
シェリーは足をとめ、その光景に見入った。
(海なんて見るのいつ以来かしら?…この海、フランスにもつながっているのよね。)
思えば、いったい幾月このようなつらい旅を続けてきただろう。
(あんなことさえなかったら、私は今ごろ何をしていたのかしら…。)
ぼんやりとそんな事を思う。
「ココ…、あなたは今いったいどこにいるの…?」

確かに魔物が減ったからといって喜んではいられない、残った40人の中に
間違いなくあいつは入っているはずだ。しかも、その力をさらに強くしているに違いない

ふと視界のはしに遠ざかっていくブラゴの背中が入る。
確かにブラゴは強い。だけど…、ほんとに私達にあいつを倒す事ができるのだろうか。
いや、絶対に倒さなければならない!だけど…、
あの優しいココの心すらねじまげてしまった奴だ。
これまで闇雲に戦ってはきたが、時々不安で胸が押しつぶされそうになる。

「ブラゴ…」
私達の関係もいったいどう説明すればいいのだろう。
共に戦う相手…。
今までに何度か体を重ねた事もあった。だけど、そこに恋愛感情があるわけではない。
互いに利害が一致しているというだけの関係なのか…。
そんなことを翳っていく海を見つめながら、取り留めもなく考えていると、
ふと頬を涙がつたっていくのがわかった。なぜ泣いているのかわからなかった。
ただそのままぼんやりと、涙が出るにまかせて、そこにたたずんでいた。

ふと、頬に涙とは違う冷たいものを感じ取り、
我に返るといつのまにか傍らにブラゴがいた。
冷たいと感じたものは、シェリーの涙をぬぐうブラゴの指先だった。
「どうした。シェリー。」
「べ、別に!なんでもないわ!帰るわよ!!」
そう言い放ち、踵を返して歩を進めようとするが、涙で視界がぼやけ
うまく歩く事が出来ない。
思いがけず自分に向けられたブラゴの優しさと、
泣いている所を見せてしまった安堵感から、涙はとまるどころか、
あとからあとから溢れ出し自分ではどうする事もできない。
ブラゴはただ何も言わず側にいてくれる。
(こんな時、だまってブラゴの胸を借りて思いっきり泣く事が出来たら…)
そうは思うのだが、気位の高さゆえ、素直に口に出す事が出来ない。
ただ、傍らに立つブラゴの毛皮の裾をぎゅっとにぎり、
突っ立って泣きじゃくりつづける事が精一杯だった。

と、突然ブラゴがそばにあった岩肌にシェリーの体を押し付けた。
そしてなおも泣きじゃくるシェリーの唇をその唇でふさぐ。
優しく舌でなめとるように、そっとシェリーの唇をなぞっていく。
シェリーはなにも言わずされるがままだ。
そして、シェリーが少し落ち着いてきた事を確認すると、
ブラゴは両の手を、ゆっくりシェリーの曲線を確かめるように胸元におろしていき、
いきなり、着衣の前をはだけさせた。白くすべらかな胸があらわになる。
確かにここは岩陰ではあり、周囲に人影もない。
だが、いつものシェリーならこんなところで!とはげしく抵抗するところだ。
しかし、泣きつかれたシェリーにそんな気力はなく
もはや、されるがままになっていた。
(…こんなつもりじゃなかったんだけど…。ただ抱きしめてもらえさえすれば…
 良かった… はずなのに…)
そんなことを頭の端でぼんやりと考えるシェリーだったが、
体は否応もなく違う反応をする。
あらわになった乳房に、ブラゴがくちづけ、あま噛みし、
ゆっくりなでさすっていくたびに、息が荒くなっていくのがわかる。
さっきまで、嗚咽が漏れていた口からは、今は甘い吐息が漏れている。
そして、荒々しいだけのいつもの愛撫とはどこか違う、優しささえ感じとれる
ブラゴのやり方に、自分が高ぶっていくのを隠し切る事が出来ない

その証拠に体の奥から、熱いものがどんどん溢れ出てくるのが自分でもよくわかった。
今…、私…みっともないくらい濡れている…。
ここに触れたら、ブラゴはまたいつものように、意地悪を言って私を罵るのかしら…。
そう思った瞬間、ブラゴの右手がシェリーのスカートをたくし上げ、
ショーツを下ろしにかかる。
ブラゴの手が、シェリーの亀裂にのびた瞬間、思わず身を硬くしたシェリーだったが、
ブラゴはなにも言わず、そこをゆっくりとなぞった。
何度も何度も、折り重なったひだにそっと指先を這わせていく。
「は…あっ、ん、ん、もう、だ…め…」
シェリーのひざから下はがくがくとし、岩肌に支えられているとはいえ、
もう立っていることが出来ない。
そのままそこにへたりと、座り込んでしまった。

座り込んだシェリーが顔を上げると、大きく屹立したブラゴのものが目に入った。
思わず息を呑む。実は直視するのはこれが始めてだった。
こんなに大きいものがこれまで私の中に入っていたの…?
羞恥心と驚愕から、思わず顔を横にそむける。
「フン、いまさら恥ずかしがる事もないだろう」そう言うブラゴに
やはりシェリーはいつものようなくちごたえをしない。ただ、顔をうつむけるだけだ。
「チッ」
ブラゴはシェリーの傍らにひざまづくと、耳元でつぶやく。
「いいな?シェリー」
シェリーが答える間もあたえず、ブラゴはシェリーの腰を軽く抱き上げ、
きつく角度をつけた自分にあてがった。そのまま、奥まで突き進む。
十分すぎるほど濡れていたシェリーの裂け目は、それを安々とのみこんだ。

「は…あっ!!」
挿入されただけなのに、体にびくっと電流が走る。
シェリーの目元が先ほどの涙とは違う潤みをみせ、熱っぽくなっているのを確認すると、
ブラゴはそのまま仰向けになり、下からシェリーを突き上げた。
何度も突き上げるたび、シェリーの上体は激しく揺れ、
はだけた上衣の間から、かたちの整った、張りのある乳房が見え隠れする。
「邪魔だな」
そう言うと、ブラゴは半身を起こし、シェリーの上衣を肩口まで脱がしにかかった。
あらわになった乳房をもみしだき、更に口でも愛撫し、執拗に攻めたてる。
「ん…ああっ!いや…っ!…こん…な…の…」
シェリーも耐えきれず、ブラゴの髪を掴み、自分の胸元にかき抱いた。
なおも突き上げてくるブラゴに、
「…ああっ!…も…う、ダメ、おかし…く…なり…そう…」
シェリーは息も絶え絶えに懇願し、ブラゴの片腕をぎゅっと掴んだ。
シェリーの掌が、しっとりと熱を帯び自分の肌に吸いついてくるのを感じ取ると、
「いくぞ」
ブラゴはシェリーの耳元で囁き、その奥深くに放出した。
と同時に、大きく体を震わせてシェリーも果て、
そのままブラゴの体の上に崩れ落ちた。

ブラゴの胸の上で荒くなった息を整えながら、
やはりシェリーはいつもと違う、と感じていた。
いつもなら行為のあと、ブラゴは1人でさっさと身支度を済ませてしまう。
それが今日はこうして体を動かそうともせずシェリーの体を受け止めたままでいてくれる。
「大丈夫か…?シェリー」
ふいにまた思いもかけない、いたわりの言葉をかけられた。
それどころか、自分が乱暴に脱がせたシェリーの上着をそっと引っ張りあげてさえくれる。
(ブラゴなりに私を慰めてくれてるのかしら…?でも、まさかこのブラゴが…)
シェリーの胸は何とも言いようのない切ない気持ちでいっぱいになった。
「ブラゴ…」
あなたは私の前からいなくならないで…
声には出さずそうつぶやいてみる。

昇り始めた月だけがただ二人を照らしつづけていた。



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