703 @706


01 モチノキ町・上空
  ツバメが飛んでいる。

02 総合病院・屋上
  ツバメが羽を休めている。
  ツバメの巣が出来つつある。
  その下から男達の声がする。
  男Aの声「よし、ニトロは手に入れた・・・」
  男Bの声「あとは・・・」

03 こども公園
  辺り一杯に花が咲き誇っている。
  その中心で、しおりが笑顔で小さな花の冠を作っている。
  しおり「コルルと出会って丁度一年・・・か・・・」
  と、そこに言い争ってる子供達の姿が。
  しおり、そちらの方を向く。

04 同(少し離れた所)
  子供達が、サッカーボールを持った一人の少年を包囲している。
  子供A「またその嘘かよ」
  子供B「オレオレ詐欺よりくだらねぇや」
  子供C「いい加減、嘘つくのはヤメロよな、勇太」
  少年=秋山勇太が怒鳴る。
  勇太「嘘じゃねぇんだ! 本当なんだ!」
  子供A「信じられるか、そんな話」
  子供B「お前、病院にひきこもりすぎて、頭までおかしくなったんじゃないの?」
  爆笑する子供達。
  涙を溜めて悔しがる勇太。
   *  *  *  * 
  子供たちを眺めていたしおり、怪訝な表情を浮かべ、そちらに行こうとする。
  が、ピクッとして足を止める。
   *  *  *  * 
勇太を包囲している子供達に、一人の大男が近寄ってくる。
  大男の声「君達、仲良くしなきゃダメだよ」
  子供達、そちらの方を一斉に見るや、おっかなビックリ!
  子供A「わわわ!」
  子供B「バケモノォ!」
  子供達、勇太を残して一斉に遁走していく。
  フランケンシュタイン似の大男、笑みを浮かべながら勇太の方を見る。
  大男「やぁ、大丈夫かい?」
  勇太、ガクガクブルブル震えながら頷く。
  勇太「う、うん・・・」
  大男「それは良かった。僕は、進一っていうんだ」
  大男=秋山進一が勇太に近寄る。
  進一「君の名は?」
  勇太「(後退りして)ゆ、勇太、秋山勇太っていうんだ!」
  進一「(一瞬ピクッとして)秋山・・・、奇遇だなぁ。僕の姓も秋山なんだ」
  勇太「(震えたまま)そ、そうなんですか、き、奇遇です、ね、」
  進一「君は友達と何があったんだい? 何か、ウソツキ呼ばわりされてたみたいだけど」
  勇太「(震えが止まらず)は、はい、お、俺の話を、皆が、信じないもんだから」
  進一「へぇ。どんな話なんだい?」
  勇太「お、俺の知り合いの子供が、く、口から電気を出したって、話さ!」
  進一、驚愕!
  進一「ええっ!?」
   *  *  *  * 
  しおりも、驚愕!
  しおり「口から電気・・・!?」
   *  *  *  * 
  進一、勇太の両肩を掴んで詰め寄る。
  進一「ゆ、勇太くん!」
  勇太「(パニック状態で)ハ、ハイ!」
  進一「き、君も、ガッシュ君の事を知ってるのかい?」
  キョトンとする勇太。
  勇太「あ、ああ」
  と、しおりも笑みを浮かべて二人に近寄ってくる。
  しおり「貴方達も、ガッシュ君の事、知ってるの?」
  勇太と進一、しおりの方を向く。
  進一「・・・、君は?」
  勇太「誰?」

05 総合病院・リネン室
  病院長が拘束具で縛られている。
  病院長「き、君達、こんな事して只で済むと思っているのかね!?」
  その眼前に三人の男の影が。
  男A「そんなことより、俺達に逆らったら只で済まないことをわかってもらおう」
  病院長の眼前に、ニトログリセリンの瓶が突きつけられる。
  顔を引きつらせる病院長。
  男B、スポイドで一滴すくい、そして落とす。
  病院長の足元で、ジュッ!と音がする。
  病院長、ますます顔を強張らせる。
  男A「俺達にタテ突いたら、あんたの命だけじゃない」
  男Cもニトロの瓶をあと2つ抱えている。
  男A「ここの病院も吹っ飛ぶかもな」

06 ファーストフード店内
  店内に『光のプリズム』のBGMが流れている。
  しおり・進一・勇太がブリバーガーを手にしながら話している。
  勇太、大笑い。
  勇太「へぇ、ガッシュのやつ、いろんなトコで活躍してんだなぁ」
  進一「うん。僕が強い意志を持てたのも、ガッシュ君と清麿君のお陰なんだ」
  進一、携帯を出す。
  進一「僕はママの墓参りのためここに来たんだけど、ガッシュ君達は出掛けてるみたいだね。出ないんだ」
  しおりも携帯を出す。
  しおり「あら、進一さんはガッシュ君の所の電話番号知ってるの?」
  進一「うん」
  しおり「ね、教えて教えて!」
  進一「あ、うん(と、データ転送)」
  勇太がしおりのバックの方を見る。
  中に、お人形=ティーナがいる。
  勇太「おっ、よく出来た人形じゃねぇか」
  しおり、微笑んでティーナを勇太に見せる。
  しおり「これね、私の妹が・・・コルルが好きだったお人形のティーナなの」
  しおり、ティーナの頭に花冠をつけてやる。

07 こども公園(回想)
  消えかけたコルルが、しおりの手を握っている。
  コルルの声「だってしおりちゃんは、コルルの本当に優しいお姉ちゃんだもん」

08 ファーストフード店内
  しおり、ティーナを胸に抱く。
  しおり「あの出来事からガッシュ君は、コルルのために優しい王様を目指す様になって・・・」
  進一、しみじみとした表情。
  勇太、ブリバーガーをガブリとくわえる。
  勇太「へぇ、ガッシュには、そういう事もあったんだな・・・」
  しおり「雄太くんは、ガッシュ君とどんな事があったの?」
  勇太、サッカーボールを握る。
  勇太「俺? 俺は・・・」

09 小学校・グラウンド
  ゴールポストに、勇太のシュートが突き刺さる!
  ブリバーガーをくわえた勇太が飛び上がってガッツポーズをとる。
  勇太「俺はガッシュのお陰で足が治ったんだ!」
  しおりと進一が笑みを浮かべながら眺めている。
  勇太「そしてちゃんとメシを食べたら、」
  勇太、ブリバーガーを飲み込む。
  勇太「口から電気を出せるそうだ!」
  プッと吹き出すしおり。
  しおり「そんな事まで信じちゃって・・・」
  進一「でも、夢は大切だよ」
  と、そこにしおりの携帯が鳴る。
  しおり、携帯のメールを見る。
  進一「どうしたんだい?」
  しおり「ちょっと用事が入っちゃって」
  進一「じゃ、ここで一旦お別れだな」
  勇太が叫んでいる。
  勇太「おーい進一ーっ! キーパーやってくれ!」
  進一「ああ、いいよ」

10 総合病院・前
  しおりが来る。
  しおり「お母さんも人使いが荒いんだから・・・、忙しいからって、自分の通院記録くらい、自分で取りに行けば・・・」
  と、吹き上げの突風が!
  しおり「キャッ!」
  髪とスカートを抑えたしおりのバッグから、ティーナの花冠が舞い上がってしまう。
  しおり「あっ、花冠が!」
  花冠、病院の屋上へと消えていく。
  しおり、見上げながら走って屋内へと入る。

11 同・階段
  しおりが必死になって駆け上がっている。

12 同・リネン室
  拘束している病院長の眼前で男Aがニトロの瓶を弄んでいる。
  病院長「き、君、私が院長室にいないと、病院中が大騒ぎになるぞ! それに、このリネン室には清掃員がくる予定だ」
  男A「おっと病院長、嘘は良くないな」
  男A、瓶を病院長に突きつけてビビらせる。
  男A「貴方は今日から長期出張予定、そしてこのリネン室の清掃は明日の夕方で、それまでは立入禁止状態・・・、そういうことは調査済だ」
  病院長「くっ・・・」
  男A「それまでには仕事を済ませる。誰にもバレずにな」
  病院長「仕事・・・、仕事とは?」
  男A「ヤク(覚醒剤)だよ、ヤク! ここはそれが合法的にごまんとあるからな」
  病院長「・・・、悪人め!」
  男「そう、俺は・・・」
  男Aの表情が露わになる。
  男A=細川だ!
  細川「レイコムが消えても、筋金入りのワルなんだよ!」

13 小学校・グラウンド
  勇太、シュート!
  ガシッ!とキーパーの進一がキャッチ。
  勇太、へこむ。
  勇太「あちゃー、とられたか」
  進一「ははは、もう一回チャレンジだよ」
  と、そこにツバメが。
  はっと顔が綻ぶ進一。
  進一「あ、き、君は・・・」
  ツバメ、進一の肩に止まる。
  ツバメの体中に傷の手当て跡がある。
  勇太が進一に近寄ってくる。
  勇太「へぇー、ツバメなのに飼いならしてるのって凄いじゃん」
  進一「うん。このツバメはね、去年怪我してたのを僕が治してあげたんだ」
  ツバメ、嬉しそうに羽をバタバタさせている。

14 第3エコービル(廃屋)
  男B=清兵衛がニトロの瓶と起爆装置を仕掛けている。
  清兵衛「これでよし・・・と」

15 同(回想)
  フェインの本が燃やされる。
  清兵衛のM「あの時の復讐は、もうすぐだ・・・」

16 同
  清兵衛が携帯を持っている。
  清兵衛「細川、こちらはOKだ」

17 総合病院・リネン室
  細川が携帯を持っている。
  細川「よし、サツに対する囮は準備完了の様だな」
  拘束中の病院長、首を傾げる。
  病院長「囮・・・?」
  細川、ニヤッとする。
  細川「世話になってるよしみだ。計画を教えてやる」
  細川、ニトロの瓶を掴む。
  細川「俺たちはな、この町に恨みがあるんだ」

18 モチノキ商店街(回想)
  滝の様な雨が降っている。
  レイコムを失った細川が、浮浪者の様に歩いている。 
  細川のM「俺は口から電気を吐くガキのせいで金蔓を無くした」
  と、飲食店から声が。
  店長の声「ドロボー! 食いにげだぁ!」
  見ると、清兵衛と連次が走ってくるではないか。
  ぶつかり、転ぶ三人。
  細川のM「それがあの清兵衛と連次の出会いだ」

19 同・路地裏(回想)
  寝袋にくるまった細川と清兵衛と連次が謀議いる。
  細川のM「聞けば奴らも、そのガキのせいで金蔓を無くしたそうだ。それで食い逃げやかっぱらいの毎日だったらしい」

20 総合病院・リネン室
  細川、携帯のスイッチを切り替えている。
  細川「そこで俺はかっぱらって貯めた宝石を売り払い、奴らを雇って、この町の、この病院のヤクを奪う計画を立てたってわけさ」
  拘束中の病院長が細川を睨みつける。
  病院長「だから血管拡張用のニトロを盗み出し、それを凶器に私を拉致したというのか」
  細川「ああ、ニトロは簡単に見つけ出せたがヤクはそうはいかなかったんでな。口を割ってもらうぜ」
  細川、再びニトロの瓶を握る。
  病院長「しかし、ならば外にニトロや起爆装置を仕掛ける必要はなかろう?」

21 第3エコービル(廃屋)
  清兵衛がニトロ瓶と起爆装置を残して去っていく。
  細川のM「あれはここから逃げる時に爆発させる。そうすれば警察の目はそちらに集中して俺達は楽に逃げられるからな」

22 総合病院・リネン室
  拘束中の病院長が細川を睨みつけている。
  病院長「警察は陽動できても、ここの病院の警備員が黙っちゃいないぞ」
  細川「それも計算済みさ」
  細川、携帯を握る。
  細川「連次、囮の準備はどうだ?」

23 同・屋上
  しおりが花冠を探している。
  しおり「おっかしいなぁ、ここに飛んできたと思ったんだけど」
  しおり、さらに眼前の棟の上を見上げる。
  しおり「あの上かしら」
  しおり、梯子をのぼっていく。
  その上は、以前、勇太がガッシュの赤い本を隠した場所だ。

24 同・屋上の上
  しおりが上ってくる。
  しおり、ハッとする。
  ニトロの瓶と起爆装置をセットしている連次が、携帯を持っている。
  連次「(細川に)おう、こちらもニトロ爆弾のセットはOKだ」
  しおり「爆弾!?」
  連次、ハッとしてしおりの方を向く。
  連次「このアマ! 見たな!」
  しおり、ビックリして梯子を降りていく。
  連次「逃すか!」
  連次、追う。
  しおり、携帯のスイッチを入れる。

25 小学校・グラウンド
  ツバメが飛んでいく。
  見上げている勇太と進一。
  と、進一の携帯が鳴る。
  進一、画面を見る。
  進一「ん? あ、しおりちゃんからだ」
  進一、出る。
  進一「もしもし、・・・もしもし?」
  勇太、首を傾げる。
  勇太「進一、どうしたんだ?」
  進一「あれ、繋がってる筈なんだけど・・・、出ないんだ」
  勇太「え?」

26 総合病院・屋上
  しおりの携帯が転がっている。
  進一の声「もしもし? もしもし?」
  その傍で、しおりが連次に組み敷かれている。
  しおり「は、放して!」
  連次「しぶとい女め!」
  と、しおり、連次を急所蹴り。
  連次「ぐっ!」
  しおり、連次が倒れた隙に携帯を掴む。
  しおり「進一さん大変よ、爆弾、爆弾が!」

27 小学校・グラウンド
  進一が汗を流して携帯を握り締める。
  進一「ええっ!? ば、爆弾!?」
  勇太、ビクッとしている。
  勇太「爆弾だって・・・!?」
  進一「しおりちゃん、どういうこと、どういうことなんだい!?」
  返事は、ない。
  進一「しおりちゃん!?」

28 総合病院・屋上   しおり「んんー! んー!」
  しおりが清兵衛に口を抑えられて組み敷かれている。。
  清兵衛「危ないところだったぜ」
  連次が股間を抑えながらしおりの携帯を奪う。
  連次「すまねぇ、清兵衛」
  連次、携帯のスイッチを切ろうとする。
  が、清兵衛が抑える。
  清兵衛「おっと、待て」
  清兵衛、しおりの拘束を連次に任せると、携帯に出る。
  清兵衛「おい、聞こえるか。女は俺達が預かった」

29 小学校・グラウンド
  進一が汗を流して携帯を握り締める
  進一「ええっ!?」
  清兵衛の声「このことを警察に報せたら女の命は無い」
  進一「な、なにが目的なんだよ」   清兵衛の声「とりあえず総合病院前に今すぐ来い。急げ!」

30 総合病院・屋上
  しおりの携帯を清兵衛が握っている。
  清兵衛、携帯を切る。
  連次がしおりに猿轡を噛ませている。
  連次「清兵衛、何であんなことを?」
  清兵衛「警察に漏れたら厄介だ。それに、」
  連次「それに?」
  清兵衛「俺がニトロ爆弾を仕掛けた廃屋に誘き出せば、口封じが出来る」
  しおり「んん!(驚愕)」

31 小学校・グラウンド
  携帯を持って呆然としている進一。
  勇太、キッと進一を睨む。   勇太「何してんだよ、進一!」
  進一「えっ・・・?」
  勇太「今すぐ病院前に行かなきゃ、しおり姉ちゃん殺されるんだろ、いくぞ!」
  進一「う、うん」
  進一、勇太の後を追って走る!

32 総合病院・リネン室
  ドサッ!と、拘束されたしおりが、同じく拘束された病院長の横に押し倒される。
  しおり「んんっ!」
  細川、清兵衛、連次が見上げている。
  連次「だがあの廃屋が爆発するのは3時間も先だぜ」
  清兵衛「それまでは、ネズミの様に街中を走り回ってもらうさ」
  細川、フッと微笑む。
  細川「ほう、面白い余興が楽しめそうだな」
  細川、イヤらしい視線でしおりの方を見る。
  細川「女も手に入ったことだし・・・」
  しおり、不安な表情。
  清兵衛、覗き窓から外を見ると、ピクッとする。
  子供と大男が走ってくるのが見える。
  勇太と進一だ。

33 同・外
  息を切らせて突っ走る勇太と進一。

34 総合病院・リネン室
  清兵衛がしおりの首を掴み、外を眺めさせている。
  清兵衛「携帯の相手はあいつらか?」
  しおり、そっぽを向く。
  細川、ニトロ瓶を病院長に向ける。
  病院長「ひいいっ!」
  しおり「!」
  細川「さぁ、答えろ。どうなんだ?」
  しおり「・・・」
  しおり、こくんと頷く。
  清兵衛、ニヤッとして携帯を持つ。

35 同・外
  ハァハァ言いながら勇太と進一が突っ走る。
  と、進一の携帯が鳴る。
  進一、でる。
  進一「も、もしもし、もしもし!」
  清兵衛の声「よし、サツには知らせてないようだな」
  進一「しおりちゃんを、しおりちゃんを早く自由にしてやるんだ!」
  清兵衛の声「まぁそう慌てるな。そのままモチノキ駅に行け。そしたら自由にしてやる」
  進一「モチノキ駅、モチノキ駅だな!」
  ブチッと携帯が切れる。
  勇太が拳を握り締めている。
  勇太「進一、駅だ、駅まで走るぞ!」
  勇太と進一、突っ走る!

36 総合病院・リネン室
  清兵衛が双眼鏡で外の二人を眺めている。
  清兵衛「へッ、バカ正直な奴等だ・・・」   しおり、顔を下に向けている。
  しおりのM「勇太くん・・・進一さん・・・、私のために・・・、私のために、ごめんなさい!」
  しおり、顔を自分の荷物の方に向ける。
  ティーナがある。
  しおりのM「コルル・・・、こんな時、私はどうすればいいの・・・?」

37 モチノキ駅
  勇太と進一がハアハア言いながら走ってくる。
  進一の携帯が鳴る。
  進一「も、もしもし、もしもし!」
  清兵衛の声「おっとすまねぇな。引渡し場所を変更した。今すぐモチノキ町立図書館に来てくれ。急いでな」
  進一「ええっ!?」
  ブチッと携帯が切れる。
  勇太が汗を拭く。
  勇太「進一、図書館だ、図書館まで突っ走るぞ!」

38 モチノキ町立図書館
  勇太と進一がフウフウ言いながら走ってくる。
  進一の携帯が鳴る。
  進一「も、もしもし、もしもし!」
  清兵衛の声「おっと悪りぃな。引渡し場所をまた変更した。今すぐ寺に来てくれ。急いでな」
  進一「ええっ!?」
  ブチッと携帯が切れる。
  勇太がキッとしている。
  勇太「進一、寺だ、寺まで一気に突っ走るぞ!」

39 寺
  勇太と進一がゼイゼイ言いながら走ってくる。
  進一の携帯が鳴る。
  進一「も、もしもし、もしもし!」
  清兵衛の声「おっとご苦労だな」
  進一「ここのどこにしおりちゃんがいるんだ?」
  清兵衛の声「ここに女はいないよ」
  進一「ええっ!?」

40 総合病院・リネン室
  細川と連次が腹を抱えて笑っている。
  清兵衛がしおりの携帯を持っている。
  清兵衛「女は今、第3エコービルにいるんだ。今すぐそこに来てくれ。急いでな」
  拘束されたしおり、悔しさの余り俯く。

41 寺
  ブチ切れ寸前の勇太、進一から携帯を奪う。
  勇太「おい、お前等! わざと俺たちをアチコチ走らせて、それ見て楽しんでるんだろ!!」

42 総合病院・リネン室
  細川と連次が腹を抱えて笑っている。
  清兵衛がしおりの携帯を持っている。
  清兵衛「あのな、嫌なら走らなくてもいいんだぜ。その代わり、女の命は無くなるな」
  拘束されたしおり、悔しさの余り涙の雫を落とす。
  清兵衛「それが嫌だったら、必死こいて走るんだな」
43 寺
  進一の携帯が切れる。
  進一、汗を滝のように流して、目が虚ろになっている。
  勇太も歯を食いしばってハアハア言ってる。
  勇太「ちくしょおぉぉぉ!」
  進一、膝まづく。
  進一「だ、ダメだ、もうダメだ、走れない!」
  勇太、進一に歩み寄る。
  勇太「進一、しっかりしろ進一! しおり姉ちゃんを助けたくねえのかよ!」
  進一、顔を地面に埋めている。
  勇太「しっかりしろよ、進一!」
  勇太、進一にサッカーボールを投げつける。
  進一「しおりちゃんは、どこにいるんだ・・・」

44 総合病院・屋上の上
  連次の仕掛けたニトロ瓶と起爆装置がある。
  その傍に、ティーナの花冠が落ちている。
  と、そこにツバメが飛んでくる。
  ツバメ、何を思ったか花冠を啄ばみ、再び飛び立つ。

45 同・リネン室
  細川が拘束中の病院長に詰め寄る。
  細川「さて、そろそろ喋ってもらおうか。」
  病院長「・・・(黙ったまま)」
  細川「・・・そうか。答えるつもりは無いか。ならば、こちらも遣り方を変えよう」
  細川、指をパチンと鳴らす。
  清兵衛と連次、拘束中のしおりにハァハァしながら近寄る。
  しおり「!?」
  しおり、恐怖の余り逃れようとするが、清兵衛と連次に組み敷かれる。
  清兵衛「へへっよく見ると、いい女じゃねぇか」
  連次「しかも、男は初めてらしいしな」
  しおり、二人の悪意を悟り、もがく。
  しおり「ンンっ、んー!!」
  猿轡をかけられたまま雄叫びを上げようとするしおり。
  病院長、顔を強張らせて細川の方を見る。
  細川「ヤクのある所を吐かなきゃ、あの娘はヤられた後、息の根を止められるぜ」
  病院長「な、何っ!!」

46 寺
  蹲った進一の傍に、花冠をくわえたツバメが飛んでくる。
  勇太と進一、ハッとしてツバメの方を見る。
  ツバメ、花冠を落とす。
  進一の掌に花冠が落下。
  進一「こ、これは・・・」

47 ファーストフード店内(回想)
  しおりがティーナの花冠を披露している。

48 寺
  進一が花冠を見てハッとしている。
  進一「・・・しおりちゃんの人形の花冠だ!」
  勇太、驚く。
  勇太「ええっ!」
  ツバメ、上空を旋回して病院の方へと行く。
  進一「あのツバメを追えば、その先に、しおりちゃんがいるかもしれない・・・」
  進一、ふと視線を逸らす。
  奇しくも、進一の母の墓がある。

49 同(回想)
  ガッシュが進一の母親の墓前で語っている。
  ガッシュ「進一の母上殿、お主の子、進一は強き者であるぞ!」

50 同
  進一、拳を握り締める。
  進一「そうだ、僕はこんな事で倒れちゃダメなんだ・・・」
  進一、起き上がる。
  進一「ママが心配しない、強い子になるんだ・・・」
  進一、顔を上げる。
  進一「清麿君に負けない、強い人間になるんだ・・・」
  進一、立ち上がる!
  進一「ガッシュ君に負けない、強い意志を持つんだぁぁ(叫ぶ)!! 」
  勇太、ニコッとして進一を見上げる。
  勇太「進一・・・」
  ツバメ、病院の方へと向かっていく。
  進一、ツバメを追う。
  進一「あのツバメを追うんだ! その先に、しおりちゃんがいる筈だ!」
  勇太、サッカーボールを抱えて進一の後を追う。
  勇太「おう!」

51 総合病院・リネン室
  しおり「ンンーっ!」
  清兵衛、しおりの足の拘束を解き、両股をおもいきり開かせる。
  連次、しおりの背後に回りこみ、後ろから胸を鷲づかみ。
  清兵衛、息が荒くなる。
  清兵衛「処女膜はまだある様だな」
  連次、涎を垂らす。
  連次「へッ、意外とあるじゃねぇか、このオッパイ」
  しおり「んーんーんー、んんんーっ!!」
  しおり、猿轡をかけられたままもがき、涙を流す。
  細川、ニトロの瓶を病院長の頬に突きつける。
  細川「さぁ、医師として良心が咎めるならヤクの場所、吐いてもらおうか。あ?」
  病院長「やめさせろ、やめさせるんだ!」
  しおり、必死に抵抗している。
  連次「おっと、これとらなきゃ唇は奪えねぇからな」
  連次、しおりの猿轡をとる。
  しおり、叫ぶ!!
  しおり「助けて、コルル! ・・・勇太くん、進一さん!!」

52 同・近くの道
  進一「うおおおおおおおおおおお!!!!」
  進一、怒号を上げながらツバメを追尾して突っ走る!
  勇太も続く!
  周囲の人たち、おっかなびっくり!
  それでも構わず二人は病院めがけて一直線!

53 同・リネン室
  細川、外の騒ぎにピクッとして覗いてみる。
  細川「何だ?」
  ギクっとする細川!
  物凄い勢いで進一と勇太が向かってくるではないか!
  細川「何だあいつら、何でここがわかるんだ!?」
  連次も、見やる。
  清兵衛、慌ててしおりの携帯を取る。

54 同・前
  有線放送から『裸足の王様』のBGMが流れている。
  物凄い勢いで進一と勇太が突っ走る。
  進一の携帯の音が鳴る。
  清兵衛の声「おい、なんで病院に来るんだ!?」
  勇太、進一から携帯を借りる。
  勇太「へン、病院に来られたら困ることでもあんのかい?」
  ツバメ、病院内に突入!
  進一と勇太も続く!

55 同・リネン室
  清兵衛達、携帯に気を取られてしおりは眼中に無い。
  しおりの足が自由になっている。
  しおり、意を決した表情。
  しおりのM「コルル・・・、私、やるよ!」
  しおり、清兵衛に全力でタックル!
  清兵衛「ウオっ!?」
  隙を突かれた清兵衛、携帯を落としてしまう。
  しおり「(携帯に)進一さん、勇太くん、リネン室よ、リネン室!」
  細川、しおりを抱きかかえて携帯から引き離す。

56 同・階段
  サッカーボールを持って突っ走る勇太、進一に携帯を返すと前に出る。
  勇太「リネン室だってさ、こっちだ!」
  勇太、進一を先導する。

57 同・リネン室
  細川、しおりの首を絞める。
  しおり「くううっ!」
  悶絶するしおり。
  連次が携帯を掴む。
  連次「おいお前等! 病院から出て行かないと女の命はねぇぞ!」
  進一の声「もう遅い!!」
  連次、清兵衛、細川、ハッと振り向く!
  バアアーン!!と、ドアがブチ破られる!!
  恐怖の表情になる連次・清兵衛・細川。
  はっと顔を綻ばせる病院長、そしてしおり。
  しおり「しん・・・いち・・・さん」
  埃が薄れ、巨大な進一の姿が露になる。
  その姿は、まるでフランケンシュタインか鉄人だ。
  進一「しおりさんを、放すんだ!」
  その後ろに勇太も姿をあらわす。
  勇太「助けに来たよ、しおり姉ちゃん!」
  清兵衛と連次、鉄パイプを持って進一と勇太に襲い掛かる!
  清兵衛「このバケモノ!」
  連次「くたばりやがれ!」
  進一、両腕で鉄パイプの攻撃をガード。
  各々の鉄パイプが屈折し、清兵衛と連次の顔が恐怖に引きつる。
  進一「うわぁぁぁ!」
  進一、両鉄拳を放つ。
  清兵衛「ぐおおおおっつっ!」
  連次「ぐあああぁぁぁぁっっつっ!」
  二人、吹き飛ばされる。
  しおりとニトロ瓶を抱えた細川、ビビりまくっている。
  細川「ひええ!」
  進一、ギロリと細川を睨む。
  細川、しおりの頬にニトロ瓶をあてがい、出入口へと接近。
  細川「道を開けろ! 開けないと、こいつを、こいつを!」
  しおり、恐怖の余り、声が出ない。
  進一、睨みつけたまま、細川の後を追う。
  進一「逃さない・・・、逃さないぞ!」
  勇太も続く。

58 同・屋上
  しおりとニトロ瓶を抱えた細川が、追い詰められた様に出てくる。
  進一とサッカーボールを持った勇太が、ゆっくりと後を追う。
  細川「くっ、くるなーっ!」
  進一と勇太、ジリジリと近寄る。
  しおり、細川をキッと睨む。
  しおり「もうおしまいよ、観念しなさい!」
  細川「ち、ちくしょう!」
  細川、ニトロ瓶を落とそうとする!
  勇太「あ、あぶねぇ!!」
  勇太、寸でのところで落とされたニトロ瓶をダイビングキャッチ!
  と、細川、その隙にしおりを担いで更に屋上の上の棟に逃走!
  進一「うおおおおーっ!」
  進一、キングコングのように梯子を上って後を追う。
  勇太「進一ーっ!」
  勇太、ニトロの瓶をそっと置いて見上げる。

59 同・屋上の上
  細川と、しおりが登ってくる!
  と、細川の足が止まる。
  眼前には連次の仕掛けていたニトロ爆弾が!
  と、そこで起爆装置が作動!!
  細川「!」
  しおり「!」
  進一も登ってくる。
  進一「!」
  大爆発!!!
  しおり「キャアアアアアーっ!!」
  進一「うおおおおおおーっっ!!」
  進一、吹き飛ばされたしおりを空中で抱きかかえる!
  進一「僕は、僕は、皆を助ける強い人間になるんだ!」
  が、下はコンクリートだ!

60 同・屋上
  勇太、一目散に逃げている!
  が、振り向くとしおりを抱えた進一が下へと落下しているではないか! 
  勇太「やべえ! このままじゃ、しおり姉ちゃんと進一が!」
  勇太、ハッとして回想。

61 同(回想)
  ガッシュがザケルでコンクリートをブチ破っている。

62 同
  勇太の視界に、先程置いたニトロ瓶が!
  勇太「一か八かだ!」
  勇太、サッカーボールを蹴る!
  ボールが、先程置いたニトロ瓶に命中!
  大爆発!!!
  勇太「うわあああーっっ!!」
  反動で仰向けに倒れる勇太。
  爆煙の中に、にしおりを抱えた進一が落下! 
  進一「うおおおおおーっっ!!」
  しおり「ああああーっ!!」
  ドサッ!と、鈍いクッション音。
  仰向けに倒れた勇太、ニコッとしている。
  勇太「成功、だ・・・、やったぜ、ガッシュ!」
  勇太、拳を天に掲げる。

63 同・リネン室
  ブチ破られたコンクリ屋根の下のベットに、埃まみれの進一としおりが落下している。
  その離れた所では、細川が泡を吹いてダウンしてる。
  しおり、ふっと進一の方を見る。
  進一も、微笑んでしおりの方を見る。
  進一「大丈夫、かい・・・」
  しおり、顔を綻ばせて頷く。
  しおり「うん!」
  進一としおり、抱き合ってる。
   *  *  *  *
  二人のベッドの下にティーナがいる。
  花冠が頭に戻っている。
  ティーナ、心なしか微笑んでいるように見える。
   *  *  *  *
  リネン室の上をツバメが飛ぶ。
  爽やかな風が吹き、眩い太陽が燦燦と――― (完)


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