名無しさん@ピンキー @89


ウルルが熱を出した。
医者にかかったところによれば、疲労しているところに体を冷したのが原因だという。
疲労も当然である。この一月だけでもう既に四つのヨーロッパ諸国を転々としているのだ。
その行脚の途中で他の魔王候補と出会ったのは一昨日の事。
水の術が主戦力であるパティなのだから、戦いの度に酷く濡れてしまうのは仕方のないことだ。
だが、時間帯がまずかった。イギリスの夜は予想以上に寒かったのである。

イギリスの小さな街にあるホテルの一室。
「…ずびばぜん」
ふらふらになりながら医者から戻ったウルルは、留守番していたパティにそう謝った。
普段なら悪態の一つも出てくるところであるが、押すどころか触れるだけで
倒れてしまいそうなウルルを見ては流石に何も言えなかった。病人を責め立てるほど酷い女ではないつもりだ。
「別にいいから、早く治してよ。ガッシュちゃんを探さなきゃならないんだからね」
「ばい゛」
ウルルは咳き込みながらスーツを脱ぎ捨てると、薬を飲んですぐにベッドに入ってしまった。
普段はあれだけ几帳面なウルルがスーツを脱ぎっぱなしにするとは。病状は推して知るべしだ。
パティはスーツを拾い上げてハンガーにかけ、しわを伸ばしてやった。
「ああ…ありがどうございばず」
「…看病しよっか?」
ウルルはとんでもないと言わんばかりに激しく首を振る。
「うづっだら大変でずがら」
予想通りの反応である。パティは肩をすくめるとベッドから離れた。
さて、退屈だ。
時計を見れば午後四時を回ったところで、ホテルの食事まではまだしばらくある。
無理矢理看病する事は出来ないではないが、とりあえずそっとしておいた方がいいだろう。
そういえば、着くなりウルルが熱を出したのでまだ街を見ていない。
一足先に一通り見回ることにしよう。パティはそう決めると、鍵を持って部屋を出た。

午後六時。
パティは人影も疎らになった街の広場にあるベンチに腰を下ろすと、
売店で買ったアップルパイをかじってため息をついた。
一通り街を見回った限り、魔物の気配はなかった。
前に戦った魔物から聞き出した情報が正しければ、ガッシュはこの国にいるはずなのだが
…どうやらこの街ではないらしい。
誰よりもガッシュを愛しているという自信のあるパティでさえ、ガッシュが強いとは思っていない。
それどころか、呪文の能力だけで言えば…無論、彼の魅力はもっと別のところにあるのだが…おちこぼれの範疇だ。
運動能力に欠けるわけではないからそう簡単に負けることはないと思うが、早く見つけ出さなくては。
そうしてロマンティックに再会し、タッグを組み(電撃と水、なんと相性のいいことか!)、
二人で王への道を歩み、ガッシュは王に、パティは王妃となって魔界に凱旋する…それが彼女の人生設計だった。
…早く見つけなきゃ。ガッシュちゃんもそれを心待ちにして、私を探してるはず。
パティはパイをたいらげると、ベンチを立って空を見上げた。もう夕日も沈みかけている。
そろそろ帰らないとウルルが探しにきかねない。パティは探索を切り上げ、ホテルへ戻る事にした。
時だった。
見覚えのある姿が、すっと前を通り過ぎた。パティはその場でしばらく固まって、
それから矢のように振り返った。体をすっぽりと覆うローブ、きれいな髪、たくましいお姿!
「あっ、あの…」
不意に声をかけられて、彼は立ち止まった。それからゆっくりと振り返る。
果たして、その顔は期待通りのものであった。彼は目に涙を溜めたパティを見て
怪訝そうに何かを言おうとしたが、その質疑はタックルによって封じられた。
「おいっ!!何を…」
「ガッシュちゃん!!私よ、パティ!あなたの恋人のパティよ!」
彼に抱きついたまま、たたみかけるように言う。
パティは我ながら説明的だ、と思った。忘れているわけがないだろう、恋人の事を。
だが、言わずにはいられなかった。そうだ、恋人同士なのだ。自分とガッシュは!

「…お前…」
「ずっとずっと探してたんだから!」
パティはそこで初めて嗚咽を漏らした。彼は不思議そうにそれを見ていた。
「…あなたに会えないの、つらかった」
背中に回した腕に力を込めて、胸に顔をうずめる。涙が白いローブを濡らした。
「会いたかった」
「…ふざけるな」
彼はそう言うと、パティの腕を振りほどいて突き飛ばした。
パティは悲鳴を上げて尻餅をつき、驚いて彼を見つめ返す。
「1000年に一度の、魔界の王を決める戦いの参加者同士が恋人だと?片腹痛い!」
彼はそういって立ち上がると、ローブについた土をはたいた。
「悪いが人違いだよ、バカが。お前はオレの敵、オレはお前の敵だ」
「ガッシュ…ちゃん…」
「違うと言ってるだろうが!」
怒声が叩きつけられて、パティはビクリと体を震わせた…が、それ以上怯まなかった。
「…わたし…私、あなたの敵なんかじゃない!」
「…何?」
「確かに、確かにこの戦いじゃまわりはみんな敵よ…でも、心配しないで。
私だけはあなたの味方だから。裏切ったりしないから!
だってそうでしょ、魔界でずっと恋人だったんだもの。急に敵になったりなんかしないわ。
お願い、信じて!私、あなたのためだったら何だってしてあげられる!」
彼はじっとパティを睨みつけた。パティも目をそらすことなく、じっとその大きな目を見つめ返す。
「信じて…」
彼…ゼオンはため息をついた。まだ人違いという事がわからないらしい。
それにしても、どこまでもまっすぐな目をした女だ。本当に好きなのだろう…
ガッシュのことが。そう思うとどす黒い怒りがこみ上げてきて、ゼオンは奥歯を噛み締めた。
…ぶっ潰してやりたい。
ガッシュへの信頼を。愛を。
二度とこの目を…この姿を見ることができなくなるまでに。

「…そうかいそうかい…なら、証拠を見せてみろ」
パティの顔がぱっと明るくなる。ゼオンはパティに歩み寄ると、静かに腰を落とした。
「よかった、わかってくれたのね!何でもいいわよ、何すればい…」
言い終えるのを待たず、ゼオンはパティの両手首をつかんで押し倒した。
「!?」
その時初めて、パティは既に日が落ちていることに気づいた。
疎らだった人影も完全に消えていた。近くに街灯もなく、広場は静まり返っている。
「誰もいないさ。お誂え向きだ」
「ガッ…ガッシュちゃん!?」
「黙れ」
言うが早いか、ゼオンは無理やりにパティの唇を奪った。突然の事に面食らって
何もできないでいるパティを鼻で笑うと、ゼオンはそのまま服に手をかける。
程なく、ハートをあしらったベストが剥ぎ取られた。
「…!!」
麻痺していた思考が少しずつ回復し、パティは状況を理解し始めた。
こういうのをなんというのだったか…思い出すよりも早く
ゼオンがブラウスを引き剥くと、淡い水色の下着が露になった。
「なっ、あ…!」
ゼオンはためらわずにそれに手をかけ、ブラウスごと肩から引き下ろす。
パティは真っ赤になって両手で胸を隠すと、目をかたく閉じて俯いた。
「何をビビってる?何でもするとお前が言い出したんだろう?」
「…」
ゼオンがパティの頬を舐めると、ガチガチに強張っていた体が静かに震えだした。
怖いか。怖いだろうとも!
「恋人だろうがなんだろうが、今は本を燃やすか燃やされるかだ。
安易に信じるからこんな目に合う」
パティの閉じた目から再び、ぼろぼろと涙がこぼれた。
そうだ、脅えろ。失え、信頼を!

「本を持っていればすぐにでも燃やしていた。
恋人だと?この世界にいるのはお前を蹴落とそうとする敵だけだ!」
そこまで言ったところで、今度はゼオンが面食らった。
パティは何も言わずに両手を胸から退け、ゼオンにそれを晒したのだった。
「…!?」
「これで…信じてくれる?」
まだわからないのか。さっさと諦めてしまえば、傷も浅くてすむものを。
「…お前みたいに甘いヤツを見ると、とことんまでぶっ潰したくなる」
投げかけられた冷たい言葉に、パティは脅えた目をゼオンに向けた。
ゼオンは未だ震えの止まらないパティの体につかみかかると、
片方の突起に噛み付き、ないも同然の膨らみの無理やりに揉みしだいた。パティの顔が痛みに歪む。
ゼオンはかまわず、空いている方の手でスカートを捲り上げ、足の間に自分の膝を押し込んだ。
そして、秘部に手を伸ばす。ショーツ越しに“割れ目”をなぞり、指をむちゃくちゃに擦りつける。
それは愛撫というには、あまりに性急で暴力的だった。
「痛っ! いた、ぅく…」
耐え切れずに悲鳴を上げたパティの唇を再度塞ぎながら、ゼオンは片手で胸の突起を弄んだ。
少しずつ硬くなっていくそれに妙な満足感を覚えながら、唇を離す。
「…っく、はぁっ…」
震えも涙も止まってはいなかったが、パティは抵抗しようとしなかった。
何を耐えている。ゼオンは秘部を弄っていた指を止め、ショーツを掴んで下ろせるところまで引き摺り下ろした。
間髪いれずに、直に触れる。これにはパティも耐えかねたのか、足を必死に閉じようとした。
足の間に立てた膝は、秘部の篭城を阻むには十分だった。再び割れ目をなぞると、パティの体は一段と強張った。
ゼオンが指に力を込め、僅かに指先を押し込む。
観念したのかパティは足を閉じるのを諦め、ひくひくと嗚咽を上げ始めた。
構わずそのまま、指を擦りつける。何度も繰り返す。抵抗が薄れ始めたのはすぐだった。
パティの顔が一層紅潮し、指に何かがまとわりついていく。

ゼオンはパティの白い首筋を舐め上げ、そのまま耳元で囁いた。
「どうした、奪われたくなければ逃げてみろ。それともオレを倒してみるか?」
パティは動かなかった。まだ走って逃げるくらいの元気はあるだろうに。
「フン。選ばないなら奪われるだけだ」
淫猥な水音が次第に大きくなり始めると、ゼオンは忙しく動いていた手を止め、今度は顔を近づけた。
パティがその意味を解するより早く、今までとは全く異なる刺激が秘部を襲う。
「ひぁっ…」
思わず声が漏れて、パティは自分の腕に噛み付いた。
柔らかく温かな何かが、自分の秘所にこすり付けられている。
それが舌だと気づくのに時間はかからなかった。
そして、舐めとられるよりも多くの愛液が溢れ出していることにも。
「ふぅっ、ふっ…くふっ、んんっ!」
パティは体を仰け反らせた。声が止められない。体が熱い。
刺激が繰り返されるうち、未発達な陰核が顔を出す。
ゼオンがそれを舐め上げると、パティは声にならない悲鳴を上げた。
「…っ!」
体が跳ね上がる。息が荒くなっていく。何かが近づいてくる。
ゼオンはローブを捲り上げると、いきり立った「それ」を取り出した。
それを見たパティの目が皿のように丸くなる。見たことがないのか。そうか、それも悪くない。
ぐっしょり濡れた秘部にその先端をあてがい、ゼオンはちらりとパティを見た。
パティは浅い息をしながら、じっとそれを見つめている。
そのまま、ゼオンは腰を突き出した。
「ふぁあっ!!」
半ばでの抵抗を一気に押し切り、ゼオンはそれを根元まで押し込む。
突然の身を裂くような痛みに、パティは一瞬気が遠くなった。が、続く鈍痛が意識を引き戻す。
腰が振られる度に痛みや何やらが一斉に押し寄せて、パティは何が何だかわからなくなった。

今の自分にわかるのは一つ、ガッシュは変わってしまったということだ。
ガッシュちゃんはこんな事をする人じゃなかった。
無理やりこんなことする人じゃ。
…でも。
感覚が鈍っているのか何なのか、次第に痛みは薄れ始めた。
代わりに、心地よい刺激…電気が走るようなその感覚がどんどん強くなっていく。
「くっ、はっ、はぁあっ…」
陰核を舐められた時と同じ、何かが近づいてくるような感覚を覚え、パティは思わず喘いだ。
それを聞いて、ゼオンはもっと激しく腰を振り始める。もう喘ぎ声は止められなかった。
「あっ、あっ、あ、あん、あっ…く…!」
スカートを握り締め、行き場のない何かに耐える。秘所からの刺激はどんどん強くなり、
それに支配されて何も考える事ができなくなっていく。そして、あの感覚…
「……っっ…!!」
頭の中が真っ白になって、程なくパティは達した。
ゼオンは激しい腰の動きを止めると、パティの体を掴み、一層深く腰を押し込んだ。
脈動と共に、パティの中に熱い何かが注ぎ込まれ…
放出を終えると、ゼオンはパティから自身を引き抜いた。
秘所から異物感が消えると共に、血の混じった白いものがこぼれ出る。

ゼオンは満足げに、虚ろな目で中空を見つめているパティを見下ろした。
これでいい。
最早この顔への、ガッシュへの信頼など欠片も残っていまい。
次にガッシュと会った時、こいつはどうする?
当然、“信頼を裏切った”ガッシュに、怒りと憎しみをぶつけるだろう。
罵声、怒声、涙。
そしてガッシュは何もわからないまま、恋人と戦う事になる。
そう思うと、自然と笑みがこぼれた。なかなかの見物になるに違いない。
こんな事なら、奴の記憶は消さない方が良かったかもしれない。
まったく、惜しい事をした。

「…終わった?」
不意に話しかけられて、ゼオンは驚いてパティを見やった。パティは上体を起こして、
ブラウスの前を閉じながらゼオンの顔をじっと見つめていた。
「まだするなら、してもいいから…」
「…何?」
ゼオンはわけがわからなかった。何だ?こいつは何を言っている?
「これで…わかってくれたでしょ?私、我慢したわ」
刺激にごまかされていたらしい痛みが蘇って、パティは顔を歪めた。
だが、その歪みはすぐに笑顔に変わった。痛みなどなんでもない、とでも言うように。
「ガッシュちゃん、こっちに来てから誰かに裏切られたのよね。そうでしょ?
そうでなきゃ、こんなことする人じゃないもの…かわいそう」
パティは悲しげにそう言うと、ゼオンを優しく抱きしめる。
「でも、安心して。私は裏切らないから。
私には敵しかいなくても、ガッシュちゃんには私がいるから」
パティはそっとゼオンに口付けをした。ゼオンのそれとは全く違う、優しいキスを。
「大好き」

折れていなかった。
こいつの心は。

ゼオンは自分の耳が信じられなかった。
どうしてここまであいつのことを想える?
自分がガッシュと違うという事に気づいたわけではない。
なのに、ここまで目茶苦茶にされていながら…まだ愛することができるだと?
ガッシュを苦しませるために、罵詈雑言を浴びせて、強姦して、処女を奪ったのに。
それなのに、こいつは全ての痛みを受け入れた。
心も体も傷だらけになって、それでもまだガッシュを愛しているという。

…オレの目的は、何だ?

ゼオンの手に、ぼうとやわらかな明かりが灯った。その手でパティの後頭部を掴む。
パティがそれに気づいたと同時に、淡い光は閃光と化した。
瞬間、パティの体から力が失われる。ゼオンは倒れこんだパティを受け止めて、
そっとベンチに寝かせてやった。
これで、目を覚ました時は何も覚えていないだろう。
こいつにどれだけ何をしたところで、ガッシュへの憎しみなど生み出せはしない。
なら、こいつが傷つく必要はなかったのだ。ゼオンは自分が治癒の力を持っていないことを何より悔いた。
二度と取り戻せないものを奪ってしまった。どうすることもできない自分が情けなかった。
「…悪かった」
ゼオンは静かにそう呟くと、広場を後にした。



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