名無しさん@ピンキー @158


……ィオ…ティオ……

 ……ん、誰、あたしを呼ぶのは……せっかく、気持ち良く寝てたのに……

 不機嫌な気持ちで目を覚ました瞬間、あたしは驚いた。
 確かにあたしは寝ていた。でも、そこはいつも寝ているベッドではなかった。
 あたしが今いるベッドは、お城かお屋敷にあるような大きなベッドだった。
 それだけじゃない。もっと驚くべき事は、あたし自身が大きく変化している事であった。
 桃色の長い髪はいつもと同じだけど、体は恵に近い体つきになっている。
 胸は恵に比べると小さいけどね。
……って、そんな事を言ってる場合じゃない!
 それよりも何よりも、あたしは今、見た事もない大きなベッドの上で、裸でいる。
 思わず顔を真っ赤にして、両腕で胸を隠し、足を閉じる。
 そんなあたしを、ベッドの上に乗っている男が見ている。

 「何をそんなに恥ずかしがっておる」
 「は、恥ずかしいに決まってるじゃない!」
 「そ、そうか……すまん」
 男はそう言うと、ベッドから離れ、部屋にかけてあった大きな黒のマントを持って、
ベッドに戻ってきた。そして、それをあたしの体に被せる。
 「ど、どうして、あたし、こんなところにいるの?」
 「どうしてって……これから、私とお主が契りを交わす為であろうが」
 「ち、契り!?」
 男からの言葉に、あたしは驚いた。しかし、男は真剣な表情であたしを見つめる。

 男の手が、マントに覆われているあたしの両肩を掴んだ。必死に抵抗して、
首絞めしようかと思ったが、何故かできなかった。
男の真剣な目が、あたしを捕らえて離そうとしなかったからだ。
そこには、乱暴しようとかいう意志は認められない。
 その気持ちに応えるべきだけど、あたしはまだ、今のこの状況に困惑している。
 「ティオ…怖いのか?」
 「……ごめん……あたし、まだこの状況を受け入れる事ができなくて……。
あんたの事、嫌いだとか憎いとかかじゃないよ!でも、痛い思いをしたらどうしようとか、
怖い目に遭うんじゃないかと思って……」
 「私が傍にいるから、心配しなくて良いぞ。
 私とお主は互いに愛し合っている間柄ではないか」
 あたしの正直な気持ちに、男は優しい言葉で応えた。とても嬉しくて、あたし、つい
泣いちゃった……。すると彼は、人差し指であたしの涙を拭き、顔を近づけた。
 それが意味するところを理解すると、あたしは目を閉じて“何か”を待った。
 その“何か”はすぐに来た。男は何も言わず、あたしの唇にキスをした。




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