ノワール @490


ビクトリームはゾフィスに呼び出された。本の持ち主モヒカン・エースは部屋で待機するようにゾフィスに言われたので彼1人だ。
「ビクトリーム、貴方が何故ここに呼び出されたか分かっていますよね?」
ゾフィスは玉座に座っていて、傍らにはココが立っている。
「この華麗なるビクトリーム様を四天王の一員に加える為か?」
ビクトリームは外見とは裏腹に強い。バカだが笑えるが強い。だが、ベルギム・E・Oよりバカなので四天王入りは出来なかったのだ。
「全然違います。貴方、メロンと一緒に私のラズベリーケーキを食べましたね…その罰を受けて貰います」
即効で否定するゾフィスの顔は全然笑っていなかった。そんなゾフィスをココは呆れ顔で見てため息をつく。
「ベリーシット!何故そんな事でこの私が罰を受けねばならんのだ!」
「そんな事?…食べ物の恨みはとても恐ろしいものなのですよ…貴方だって自分のメロンを勝手に食べられたら許せないでしょう?」
「当然だ!そんな奴はチャーグル・イミスドンでロストしてやるわ!!」
「理解して頂けたようですね…さて、貴方への罰をいくつか考えましたので貴方自身に選んで貰いましょうか…」
「何だってー!!!やっぱり罰はあるんかい!!!しかも私が選ぶんかい!!!」
「当然です。まず1つ目、石に戻る」
「嫌だ!メロンが食えなくなるではないか!」
「2つ目、本を燃やして魔界に帰る」
「魔界にメロンが無かったら困るから嫌だ!」
「(メロンしか頭に無いのかこいつは…)3つ目、四天王全員と戦う。1人でも倒す事が出来たら貴方を四天王にしてあげましょう」
「いくら華麗なるビクトリーム様でも四天王全員相手にして勝てるかぁ!死んでしまうわぁ!!最後にデモルトに食われてしまうわぁ!!!」
「(お前なんか食ったらいくらデモルトでも絶対に腹壊すぞ…)4つ目、貴方の大嫌いなピーマンを食べる」
「絶対嫌だ!!あんな物食ったら吐いてしまうだろうがぁ!!」
「(ディオガ・テオラドム撃ったろか…いや、ディガン・テオラドムの方が…)5つ目、一晩独房で過ごす」
「キャッチ・マイ・ハート!それだ!それに決定だ!!」
「(かかったな、バカめ…)いいんですね?では、行きますよ…」
「ブルァアアアアア!!!」
ゾフィスが玉座のひじ掛けにあるスイッチを押すとビクトリームの足元の床が開き、ビクトリームはそのまま落下した。

「これはある意味一番厳しい罰ですよ…これを選ばせる為に他4つは絶対に選べない物ばかりにしたんですから…」
「どういう事?」
ゾフィスの考えがよく分からないココはゾフィスに質問する。
「ククク…ビクトリームに他の選択肢は最初から無かったんですよ…私は最初からこの罰を与えるつもりだったのですから…」
「一晩独房で過ごすのがそんなに厳しい罰なの?四天王けしかけるほうが効くんじゃない?」
「多少痛めつけた所であのバカは懲りませんよ。だからこの方法にしました…じゃ、見ましょうか」
ゾフィスとココは床が開いて出来た穴を覗き込んだ。勢いよく落ちたのかビクトリームが地面にめり込んでいる。
「ところでゾフィス、この落とし穴って最初からあった仕掛けなの?」
「いいえ、この日の為に私が作りました。見事に引っ掛かってくれて気分爽快ですよ…ククク…」
「そ、そう…流石ね、ゾフィス…」「このくらい、たやすい事ですよ」
ココは呆れながらも一応仕掛けを作ったゾフィスの腕を誉めた。
「ベリーシット!!我が体!ダメージ20!!!着地失敗!!」
地面にめり込んでいたビクトリームが目を覚ますと、見知らぬ部屋だった。
その部屋はとても広いが、自分が落下したすぐ近くに大きなベッドがあるだけだった。ビクトリームはベッドに寝転がった。
「フン、今日一晩我慢すれば良いだけの事…他の4つに比べれば楽なものよ…しかし、私が落ちた穴が天井にあるのが許せん…」
ビクトリームがぼやいていると、部屋からぞろぞろと大勢の人間が入って来た。

「お、お前達は本の使い手達ではないか!しかし何故女性ばかりなのだ?」
ベルギム・E・Oの本の持ち主、ダリアを始めとする女性達はたちまちビクトリームを取り囲んだ。
「こ、これは一体何事だ!?しかしチャンスだ!こいつらが入ってきた所から脱出してくれるわ!」
「ビクトリーム、貴方は完全に包囲されています。そのベッドから降りる事は許しません」
天井の穴をよく見るとメガホンを持ったゾフィスが小さく見える。
「脱走なんて困りますね…彼女達が貴方に罰を与える役なのですよ…その罰を受けて貰わないと…」
「罰を与えるだと?人間共に何が出来る?こんな奴等キックをくらわして脱出してやるわ!!」
「抵抗しようとしても無駄ですよ。抵抗して彼女達を傷つけたら彼女達のパートナーである魔物全てを敵に回す事になりますよ…」
ビクトリームは想像した。ベルギム・E・Oを始めとする本の持ち主が女性の魔物達を敵に回す事の恐ろしさを…。

「わ、分かった…大人しく罰を受けてやる…」
「物分りが良いですね。あ、ちなみにその部屋は完全防音されています。いくら大声で叫んでも無駄ですよ」
「何ー!!!」
「…では、ごゆっくり…」
ゾフィスがそう言うと天井の穴が塞がった。これでこの部屋は完全防音になった事を意味していた。
「ねえゾフィス、結局罰ってどんな事をやるの?」
「ビクトリームはこれから私の力で淫乱になった彼女達に一晩犯されるんですよ…言ったでしょう?ある意味一番厳しい罰だと…」
「それは厳しい罰ね…正に快楽地獄って感じ…ねえ、私も行っていいかしら?」
「駄目ですよ。絶対に許しません。貴女では罰ではなくご褒美になってしまいます…あのバカに貴女は勿体無い…」
「まあ、ゾフィスったら…ところで、その為に部屋を防音にしたの?」
「ええ、この日の為に作っておきました…ラズベリーケーキの恨みを晴らす為にね…」
「(そこまでやる?普通…)ゾフィス、貴方ビクトリーム嫌いでしょう?」
「ええ、大嫌いですよ。あんなバカは私の手下に相応しくない…ですが一応強いから仕方なく置いてやっているんですよ…」
(だからってこんな大掛かりな仕掛け作らなくても…ゾフィスも何だかんだ言ってもやっぱり子供ねえ…)
ココは優れた頭脳をこんなしょうもない事に使うゾフィスに呆れた。
「さて、寝ましょうか…ココ、貴女には私がいます…あんなバカには絶対に渡しませんよ…」
「え、ええ…私は貴方のものよ、ゾフィス…(ま、いいか♪)」
ゾフィスとココは寝室に向かった。


その頃抵抗出来ないビクトリームは、女性達によって服を脱がされ、股間の紳士を露出させられていた。
「うわおっ!わーお!!!」
女性達の何人かがビクトリームに覆い被さって来た。
「やめろ、やめろ!うわーお!!」
股間の紳士を指でしごく。
「私の紳士をいじめるなー!!!」
何人かが舌で股間の紳士を舐め始める。
「私の紳士を舐めるなー!!!」
女性達の一人が股間の紳士を口に含む。
「私の紳士をくわえるなー!!!」
そのまま豊満な乳房で股間の紳士を胸で挟む。
「私の紳士をメロンのような胸で挟むなー!!!」
上半身には女性達が代わる代わるディープキスをしてくる。
女性達の愛撫により、ビクトリームはだんだん力が抜けていき、されるがままとなっていった…。
そのうちダリアが、股間の紳士を自分の秘所に挿入した。ダリアは激しく腰を動かす。
「ケケー!!!」
「ぶるぁぁぁぁ!!」
ビクトリームはダリアの激しい腰の動きと股間の紳士を締め付ける秘所の感触に我慢出来ずに声を出した。
「頼む、イク時はVの体勢でイかせてくれ〜」
「ケケケー!!!」
「我が股間の紳士、撃沈!」
ビクトリームはVの体勢でイク事が出来た。秘所から股間の紳士を抜き取り、ダリアが眠りに付いた。
「ふう…Vの体勢でイけたわぁ…てうわーお!」
ビクトリームは忘れていた。女性達はまだまだいると言う事を。そして自分が彼女達全員の相手をしなくてはならない事を…。
女性の1人がビクトリームに覆い被さり豊満な乳房でビクトリームの顔を挟み込んだ。
「わ、私の顔を…メロンのような胸で挟む…な…く、苦しいわぁ…」
ビクトリームは喋る事も許されず、1人、また1人と次々に一晩中犯された…。ビクトリームが開放されたのは全員がイッた後だった。


「ベリーシィィットウ!!!ゾフィスめえ!!覚えてろー!!!」
「うるさいわよ、ビクトリーム。逆恨みはクールじゃないわ」
アルベールとオモチャで遊びながらもレイラがツッコミを入れる。
「ラズベリーケーキ食ったお前が悪いんだろが。一晩独房送りだけで済んだんだからいいじゃねえか」
ダルモスも続けてツッコミを入れる。
「ちっとも良くないわぁ!!おのれゾフィスめえ!!この屈辱は忘れんぞぉ!!必ずリベンジしてくれるわぁ!!」
あの後ビクトリームは釈放され、もとの場所に戻って来れた。しかしビクトリームの怒りは収まらなかった。
「あの〜こちらにビクトリームはいますか?」
「「「ベルギム・E・O!!!」」」
3人は声をそろえて驚いた。四天王の1人、ベルギム・E・Oが入って来たからだ。
「四天王がこんな所に何の用かしら?」
「ダリアが寝たまま全然起きないんですよ。ゾフィスに聞いたら『ビクトリームに聞きなさい』と言うので聞きに来ました」
「そういや、オレの本の持ち主も全然起きねえな…」
「ビクトリームは知ってるのよね?教えてくれるわよね?」
「教えろよビクトリーム、気になるじゃねえか」
「ダリアだけじゃなく女性の本の持ち主だけがずっと寝ているんですよ。さ、教えなさい」
レイラ、ダルモス、ベルギムがビクトリームをじっと見る。
(くうう…絶体絶命大ピンチだわぁ…しかし本当の事は絶対に言えん…おお、そうだ!)
ビクトリームに良い考えが思い浮かんだ。

「良かろう!ならばメロンを持って来い!持って来れば見せてやろう!」
「どうぞ」
ベルギムはどこからかメロンを取り出し、ビクトリームに渡した。
「ホム!フムホムホム、ブジャムシャ!」
ベルギムがくれたメロンに豪快にかぶりつきカッ、カッと音を立てながら皮に付いたメロンも残さず食べて皮を捨ててVの体勢を取った。
「キャッチ・マイ・ハート!!ベリーメロン!!」
「ベリーメロン!!」
何故かレイラも一緒にVの体勢を取る。
「キャッチ・マイ・ハート!」
「ベリーメロン!!」
「お口にとろけるベリーメロン!!」
「ベリーメロン!!」
「1・2ー!1・2ー!(ワン・トユー!ワン・トユー!)ベリーメロン!!」
ベリーメロン!!」
「ブルァアア!ブルァアア!ベリーメロン!!」
「ベリーメロン!!」
何故かレイラも一緒に踊った後、アルベールの方へ向かう。
「おかわりだ!!!」
最後に1人で決めポーズを取るビクトリーム。
「やかましい!!!」
黙って見ていたダルモスがツッコミを入れる。
「マキシマムGOOD!とっても素晴らしい歌ですね。ベルギム・E・Oはとっても楽しいです」
同じく黙って見ていたベルギムは大満足な表情だった。もしこの場にダリアがいたら呪文で感動を表現して部屋を破壊していただろう。

踊り終わったビクトリームは、座っているレイラ達3人(+アルベール、モヒカン・エース)の前に座る。
「で、さっきの踊りと女性の本の持ち主達が眠っているのとどういう関係があるの?」
「よくぞ聞いてくれた、レイラ!私は昨日一晩中完全防音された独房で踊らされていたのだ!」
「それは厳しい罰ね…食べ物の恨みって怖いわね…」
「何で踊りなんだよ?しかも人間共と関係無いじゃねえか…」
「話は最後まで聞けぃダルモス!私が独房で一人で踊るのが嫌だと言ったらゾフィスが観客を用意してくれたのだ!」
「それがダリア達だったのですね…と言う事はダリア達は一晩中あの素晴らしい歌を聞いていたのですか…なんと羨ましい…」
「その通りだベルギム・E・Oよ!人間の女達が寝不足になったのは全てゾフィスが私の観客にしたからなのだよ!」
「酷い事するわねゾフィスも…」
「ああ、こっちはいい迷惑だぜ…術出せねえじゃねえか…」
「人間は私達魔物と違って2〜3日寝ないだけで寝不足になりますからね…ところでビクトリーム、お願いがあるのですが…」
「(よし、うまくごまかせた上にゾフィスの威厳ダウンだ!)何だ?ベルギム・E・Oよ」
「私も一緒に歌っていいですか?」
「「え!?」」
レイラとダルモスは驚く。
「私も一緒に歌いたいな」
「良かろう!貴様は今日からこの華麗なるビクトリーム様のバックダンサーだ!(四天王の1人を手下にする!その名はビクトリーム様!)」
「本当ですか?うれしい、うれしい、ウッハッハー!!」
ベルギムはイスに座ったまま回転する。
「では行くぞベルギム・E・Oよ!他の魔物達にもメロンを貰って歌って踊るついでに真実を伝えるのだ!」
「うん!」
ビクトリームはモヒカン・エースの首にチェーン付き首輪をつけて強制連行し、ベルギムに乗って走って行った。
「結局メロンが目的なのね…ビクトリーム…」
「しかもついでに真実を伝えるって何だよついでにって…」
レイラとダルモスは走って行くバカ2人+1を呆れ顔で見つめていた。


この日からビクトリームのリベンジが始まった。
ベルギム(+モヒカン・エース)と共に遺跡中を駆け巡り、『ベリーメロン〜私の心をつかんだ良いメロン〜』を歌いまくった。
事情を知りたい魔物達は喜んでメロンをくれた。遺跡には娯楽が無くて退屈だった為、ビクトリームの歌は大好評だった。
さらにゾフィスに不満を持っている魔物はとても多くて、真実(ビクトリーム作の大嘘)を話すと皆ビクトリームに同情してくれた。


     〜ビクトリーム&ベルギム(+モヒカン・エース)が遺跡中を駆け巡りはじめてから3日後〜

「な、な、な…何なんですかこれはあああああっ!!!」
ゾフィスは遺跡の外にも響きそうな大声で叫んだ。隣にいるココはとっさに耳を塞いだが呆れて声が出ない。
何故なら、普段はゾフィスが魔物達に命令を下す場所でビクトリームが、その下で魔物達が歌って踊っているからだった。
ビクトリームのバックダンサーはベルギム、レイラ、ダルモス、パティ、ビョンコだ。
「うるさいぞゾフィス!!せっかくの歌の邪魔をするな!!」
「こ、これは一体何のつもりですかビクトリーム!!私の城に全然相応しくないその歌と踊りはなんですか!!」
「見て分からんか?貴様にされた罰の内容を教えてやったまでよ!!そしたら皆が私の歌と踊りを気に入ってくれたのだ!!」
「罰?…ああ、そういう事ですか…私も随分コケにされたものですね…」
「さらに貴様への不満も沢山聞いたぞ!貴様嫌われまくってるんだな!かわいそうに!バ――カ!バ――カ!!」
「いい加減にしやがれてめえ!許さんぞこのクソバカがー!!ココ!」
完全にブチキレたゾフィスは口調が完全に変わった。

「ええ!ディオガ・テオラドム!!!」「ブルァアアアアアアア!!!」
ディオガ・テオラドムが直撃し、ビクトリームはVの体勢でぶっ倒れた。
息を切らしながらゾフィスは指をパチンと鳴らして、千年前の魔物達を石化の暗示で動けなくした。
「パティ!ビョンコ!死にたくなかったらてめえらもそこを動くなー!!」
「ヒイイイイ!ロードがお怒りゲロー!!」「な、何でそこまで怒るのよー!!」
この後ゾフィスはパティとビョンコとビクトリームを始めとする千年前の魔物達の心をいじり、歌の事を忘れさせた。
特にビクトリームには不本意だがラズベリーケーキを食べた事も自分が受けた罰の事も全て忘れさせた。
このベリーメロン事件が原因でゾフィスは精神に大ダメージを受け、物凄い疲れに襲われる事となった…。

「うう…当分メロンは食べたくありません…見たくもありません…あの忌まわしい事件を思い出してしまいます…」
ココに膝枕して貰いながらも、ゾフィスはげっそりやつれた顔で呟いた…。


終わり。

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