名無しさん@ピンキー @534


「・・・だ、誰!?」
荒らされた部屋で、少女は一人の男と対峙していた。
男は明らかに人間ではなかった。
見た目は人間の子供っぽかったが、その体は宙に浮いていた。
「フフフ・・・そんなに怯えた顔をしないで下さい。
私は何もしませんよ。」
男はそう答える。
しかし、その表情はあまりにも信用できない。
「い、一体貴方は何をしに来たのよ!」
少女―ココは男にそう問いかけた。
「何、貴方にこの本を読んでほしいだけですよ。」
男―ゾフィスはそう言って一冊の本を取り出した。


「・・・嘘。」
ゾフィスから渡された本を読んだココは信じられない、といった表情になった。
だって、本に書かれているのはあまりにも現実からかけ離れているのだから。
1000年に一度100体の魔物が魔界の王の座を巡って戦う。
これが夢物語でなくてなんだというのだろうか。
「嘘ではありませんよ、だって現に私が目の前にいるのですからね。」
ゾフィスはそう答える。
「で、貴方に私のパートナーになって欲しいのですが・・・
ご承諾いただけるでしょうか?」
「嫌よ!」
即答だった。
いきなり目の前にいる男と手を組んで魔物と戦えなんて無茶もいいところだ。
それに、この不気味な男が相棒という時点ですでに嫌だった。
「・・・仕方ないですね、ならば無理やりにでも承諾してもらうしか
ありませんか。」
ゾフィスは不気味に笑った。

「ちょ、ちょっと何する気!?」
ココは大声でそう叫んだ。
「貴方の心を操るんですよ、私のパートナーになってくれるようにね。」
ゾフィスはそう答える。
「心を操る?」
「ええ、私の特殊能力です、どんな人間でも私の意のままに操ることが出来るのですよ。
もちろん、人格も変える事も可能です。」
ゾフィスはベラベラと説明する。
別にこれから操る相手に説明することはないだろうが、
彼は自己顕示力の強い人間だった。
「・・・どんな人間でも・・・操る・・・。」
ココは小さな声でそう呟く。
「さて、そろそろ貴方の心をいじらせてもらいますか。」
ゾフィスがココに向かって手を伸ばしたそのとき。
「ねえ!」
いきなりココがゾフィスに向かって話しかけてきた。
ゾフィスは驚いて伸ばした手を引っ込めてしまう。

「い、いきなりなんですか貴方は!?」
ゾフィスは驚きながらもそう返事する。
「さっき貴方、人の心を操ることが出来るって言ったわよね。
それなら・・・ブロンドの髪をしていて、どこにいくにもドレスを着て行って、
ちょっとプライド高くて意地っ張りだけどでもそこが可愛いお嬢様を
”もう貴方だけしか見えない貴方にすべて捧げます・・・”って感じにも出来るの?
あ、もちろんメイド様な格好は必須で。」
ココはゾフィスに偉く具体的過ぎる質問をした。
「え、ええ出来ますよ・・。」
ゾフィスは内心”さっきまでの態度はどこに行ったんだ?”と思いながらそう答えた。

「・・・そう・・・出来るのね。」

それを聞いたココはしばらく考える。
そして、ゾフィスより不気味な笑みをこぼすとゆっくりと顔を上げてこう言った。
「・・・いいわ、貴方のパートナーになってあげる。」

「・・・え?良いんですか?」
意外な反応に、ゾフィスはあっけに取られる。
「ええ、その代わり条件があるの。
この近くの屋敷にシェリーって女の子が住んでいるんだけど
彼女を見つけたらすぐさま私の所に連れてきて貴方の力で私の従順な奴隷にすること、
それさえやってくれれば私は貴方が何をしようと目を瞑るわ。」
さらりと怖いことを言ってのけるココ。
「・・・え、ええ良いですよ・・・。」
ゾフィスは眉をひくつかせながらそう答えた。
「じゃあ、商談成立ね・・・フフ、これでやっとシェリーが私のものに・・・V」
ココはそう言いながら妄想に思いを馳せる。
そんなココを横目で見ながらゾフィスは思った・・・。
「・・・この娘・・・ヤバイ性格しているかもしれませんね・・・。」

こうして、ゾフィスの大いなる野望とココの欲望に塗れた野望が動き出したのであった・・・。



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