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ガッシュに本を焼いてもらい魔界に帰ってきたコルル。
それから早いもので数ヶ月が過ぎた・・・

帰ってきた当時は、コルルに取って、魔界は決して居心地の良いものでは無かった。
なぜなら、魔王候補に選ばれなかった子供達は候補者達を妬むものが多かったからである。
ましてや、魔王選定戦が始まって早期に戻ってくる者達は散々な言われようだった。
これは、コルルの場合も例外ではなかった。
せっかく人間界に行ったのに帰ってくるのが早すぎる、コルルの弱虫、と。

「王様になんかなりたくなかったもの。だから、私は早く帰ってこれてホッとしてるわ。」
笑顔で話すコルルに、魔界学校の子供達はコルルの元来の性格を思い出して口をつぐんで
しまい、結局、人間界に行く前と同じようにコルルは学校の友達と普通の生活を再開出来
たのだった。

もっとも、コルルに親しいものがいれば、以前とはコルルが変わってしまっていることに
気がついたかもしれない。時折ボーっと呆けている事があり、様子を聞かれても笑って何
でもないよ、と答えるコルル。しかし、コルルには特別親しい友人はいなかった。いや、
それどころか、コルルには親兄弟もいなかったのである。

元々親も無く、学校の寄宿舎に幼少の頃から預けられたコルルには、実は同年代の子らに
比べ、大人びた部分があった。それは、芯の強さというか、ある種の肝の据わり方。元来
やさしい性格のコルルが魔王候補に選ばれたことにはその辺に理由があった。それはある
種の野心と言っても良いかもしれない。幸せになる、ということへの強い欲求。


人間界でガッシュと公園で出会った時、コルルの脳裏には初めに浮かんだのはガッシュへ
の警戒心。ただ優しいだけの女の子であれば、真っ先にくるのは恐怖心のはずなのに、警
戒心が浮かんだとは、コルルには紛れも無く魔王候補者の資格があったのである。

しかし、コルルは人間界において、最良の出会いがあった。
魔界の王とならずとも、しおりとの出会いによって、自分の一番求めるものが手に入った
のである。他人のぬくもりというものを・・・・・・

ガッシュに本を燃やしてもらったことを後悔はしていない。あのまま自分がいてはしおり
に迷惑が掛かるし、束の間とはいえ、しおりとのかけがえの無い思い出は、自分の胸にあ
る・・・それに、ガッシュと、そしてガッシュの本の使い手であるやさしそうな少年に、
いつか、全てを上手く終結させてくれそうな、希望を感じたということもある。

ただ、それでも時折、自然と呆けては失われたしおりとの生活に、思い出に思いを寄せて
しまうことがあり、どちらかというと一人で過ごすことが多いコルルであった・・・


人間界から戻ってくる者たちが次第に増え、同じくしてさまざまな噂が魔界を賑わし始め
ている。中でも、千年前の戦いで石になったまま戻らなかった者たちが、ゾフィスによっ
て復活したこと、そして、彼らが、いや、それどころかゾフィスまでが戦いにやぶれ、魔
界に戻ってきたこと。これらを成したのが、ブラゴだと聞けば魔界の子供達は皆一様にな
るほどとうなずいたものである。

しかし、驚愕すべきは、帰ってくるなり大暴れをしたダルモスやデモルト(黒騎士によっ
て連行された)を倒した、ゾフィス軍団壊滅の立役者が実はガッシュとその仲間達であっ
たと言うことであった。
あの落ちこぼれだったガッシュが何故!
魔界の子らは皆一様に信じられない気持ちでいるのであった。



学校の授業が終わった後、広場に集まる子供達の間でも魔王候補者達の話題で盛り上がっ
ている。ここには普段からロウ・スクールからハイ・スクールまで、様々な年代の子供ら
が集まり、思い思いにすごしているのである。

ロウ・スクールの子供達の集まっている一角で・・・
「一体、誰が王様になるんだろうね?」
「やっぱりブラゴだと俺は思うな。」
「ハイ・スクールのバリーってのも強いらしいよ?」
「ミドル・スクールのウォンレイさんカッコいいよ。」
などなど、候補者の名前が出る中で、
「ねぇ。コルルは誰になると思う?」一人の女の子がコルルに問いかけた。
「私は・・・ガッシュだと思う。」
「ええ〜!」数人から信じれない、という声が上がったその時、

「お〜!お嬢ちゃん!お前良く分かってんじゃねーか!」
近くにいたツンツン頭の少年がニカッっと笑いながら近づいてきた。みたところ、ミドル
・スクールの子のようだ。
「あ、あなたは?」おずおずと聞くコルル。
「俺はダニー!ガッシュの兄貴分とでも言やぁいいかな。あいつなら、王様とまで行かな
くても、結構いいとこまで行けると思うんだけどな。」ニカッと笑いしゃがみ込む。
眉なしで一見怖そうに見えるが、本来の性格からか、人のいい笑顔が似合う少年だ。わざ
わざしゃがみ込んで、コルルの目線に合わせてくれる。
「向こうで・・・ガッシュと会ったんですか?」
「ああ。ちょいと訳ありでな、ガッシュに本を燃やしてもらった。」その言葉に、コルル
は少し驚いた。
「私も・・・ガッシュに本を燃やしてもらったの。」
「へぇ〜、そうかい。じゃあ、俺達、仲間だな。」ニパッっと笑うダニー。
「そうだ、もし良かったら、あいつの話聞かせてもらえないか?」
こっくりとうなずくコルル。
「じゃぁ。ちょっとそっちのほうででも・・・」ダニーが言いかけたそのときだった。


「ケッ!ガッシュに本を燃やしてもらっただと?!お前らガッシュ以下の落ちこぼれだな!」
金髪の巻き毛の少年が吐き捨てた。以前はこざっぱりしてお洒落で女の子達から人気があっ
たマルスだ。今は、人間界で悪い影響を受けたのか、ガラが悪くなって誰も寄り付かない可
愛そうな奴だ。
「なんだ、お前。」ダニーがすっくと立ち上がり、睨みつける。
「あいつの邪魔のせいで、俺は魔王になれなかったんだ!あんな落ちこぼれのせいでっ!」
「お前の言う落ちこぼれってガッシュのことか?そのガッシュに負けたお前はじゃぁ、何な
 んだよ。」
冷静に言い放つダニー。
「あんなのはマグレだ!ティオと2対1でたまたま負けただけだ!」
「見苦しいな。どのみち、お前じゃ王にはなれなかったろうよ。」ダニーの冷徹な物言いに、
マルスは切れた。
「てめぇ!ガロン!」
マルスの手のひらから、鉄棍が伸びダニーに襲いかかる!
「チッ!」
ダニーにしてみれば、マルスの攻撃は十分避けられるものだったが、交わせばコルル達が傷
ついてしまう。
仕方なく、鉄棍を受け止めるダニー。鉄棍から生える鋭い突起で上半身が血だらけになる。
「みんな、ちょっと下がってろ!」
コルル達に叫びながら、ダニーは鉄棍を横に払いのけた。続いて、持ち前のスピードで、瞬
時にマルスに詰め寄り、思いっきり右ストレートを放つ。
バシィッ!!
パワーとスピードが乗ったダニーの右ストレートはマルスの顔面に命中!派手に吹っ飛ぶ
マルス。
しばらく様子を見ても、マルスはもう起き上がれないようだった。


「大丈夫?」タタッとコルルがダニーに駆け寄る。
「なぁに、心配ねぇよ、見てな!」ニカッと笑ってダニーは手を上げて見せた。
「ジオルク!」
ダニーの体が光に包まれ、見る見るうちに、傷が塞がっていく。
「これが俺の力さ。」そう言って、ダニーはコルルに微笑んだ。
「さて、変な邪魔が入っちまったけど、カフェにでも行かないか?なんかおごるよ。」
「じゃぁ、ホットケーキがいいな!」ダニーに微笑むコルル。
もし、コルルの事を深く理解してるものがいるとしたら、それはコルルが魔界に戻って以来、
初めての本当の笑顔だということに気がついただろう。自分と同じく、ガッシュに本を燃や
してもらったというダニーの境遇に、そして王になれずに魔界に戻ってきたと言うのに何一
つ陰りの見えないダニーの笑顔に、コルルは興味が出始めてきたし、似たような境遇であり
お互いの事が解り合えそうなことに、しばらくぶりにコルルの心は晴れてきたのであった。


(閑話休題)
「ちっくしょう!あの野郎、ぶっ殺してやる!」
しばらく気絶でもしていたのだろうか、気がついたマルスは立ち上がって辺りを見回し、
ダニー達がいないことに気づく。
「あいつらぁ、どこいったぁ!」そのあまりの剣幕に周辺にいた子供達は悲鳴をあげて飛び
のいた。

「騒がしいわね。いつの時代になっても、つまらない人っているものね。」冷めた声がマル
スに打ち付けられる。
「誰だ!」振り向いたマルスの視界に入ったのは、見覚えのない少女だった。胸に擬人化し
た三日月の模様が入った服を着ている。
「私はレイラ。千年前から来たの。で、今はこの学校の生徒兼風紀委員よ」冷めた口調で話
すレイラ。
胸に手を当てたレイラの手中に三日月を頭にしたスティックが現れる。レイラはマルスにス
ティックを突きつけた。
「何で千年前の奴が風紀委員なんか?!」
「実力があるって隠せないものね。こういうことよ。ミベルナ・マ・ミグロン!」
マルスの周囲に三日月が大量になだれ落ちる!
「なにぃ!」驚愕するマルス。
「コネクト!」三日月同士が光のラインで連結し、マルスを取り囲む。
「ハーベスト!」三日月がきりきり舞に回転し、光のラインはマルスをぎりぎりと締め上げた。
「ぐわぁぁ!」
「さぁ、このまま指導室に連れて行くわよ。お仕置きは私と同じ千年前の魔物、ベルギム
・E・Oが担当よ。」
そのままずりずりと引きづられていくマルス。
「な、なんだよ、お仕置きって!」恐怖に顔が歪むマルス。
「さぁ? でもきっと、椅子に変わってお仕置きしてくれると思うわ。」無表情に、ずりずり
連れてくレイラ。
その言葉の意味を知る、現代の魔物は、この時点ではまだいなかった・・・・・・
(閑話休題終わり)


魔界学校のカフェは非常に良心的なシステムだ。
メニューは豊富、料金は格安でしかも、成人後の出世払い。実際のところ、食物が直接街路樹
に生るような世界であるため、食べ物に困らないし、カフェとしても食物採集やちょっとした
調理が出来れば成り立つので可能なシステムだ。
もっとも、当然調理場内には在庫と言うものがあるわけで・・・・・・

「ホムフムフム、ブシャブシャ、ジョブジョブジョブ、グッハー!最高だぜー!」
口元を拭いながら愉悦に浸る魔物がここに一人。
「やぁっぱりメロンは最高ダー!おばちゃん、おかわりだぁ!」
その特徴的な体形と、特徴的な食癖、そして特徴的な振る舞い・・・・・・千年ぶりに魔界に
帰ってきたその魔物は、既にカフェでは有名人であった。
「ちょっと、あんたぁ!一体何個目だと思ってるんだい!? あんた一人のためにメロン用意
してるんじゃないんだよ!いいかげんにしておくれ!」メロン魔物に詰め寄るおばちゃん。
「ブルゥァアァ!おばちゃん!あんたと呼ぶなぁ!華麗なるビクトリーム様と呼ぶがいい!」
おばちゃん、鬼の形相。
「だぁれがおばちゃんやね!美しいお姉さまと呼びな!このVの字が!出ないともうメロン食わ
せないよぉ!」
「す、すみません、すみません、美しいお姉さま、メロンを頂けないでしょうかぁ?」卑屈に
低姿勢でメロンを求めるビクトリーム。
「あいにく、メロンはもう品切れだよ!他に頼まないのなら、今日はもう帰んな!」
「な、なんだってぇ〜!?ベリー、シット!メロンがもう無いぃ!?」
「あそこのテーブルに出したので今日はもう品切れだよ。あんたも10個も食べればもう十分
 だろうに。」
呆れながら話すおばちゃんは、止せばいいのに一つのテーブルを指し示した。


カフェについたダニーとコルルは、席についてお互いに人間界であったことを話し合った。
パートナーとの出会い、共に過ごした思い出、ガッシュとの関わり・・・・・・
シェミラ像を守る為に本を燃やす決断をし、責任と達成感を胸に刻んで帰ってきたダニー。
しおりや周りの人々に迷惑を掛けない為に本を燃やす決断をし、悲しみを覚悟して帰ってきた
コルル。二人同じくガッシュに本を燃やしてもらったとはいえ、片や全く後悔をしていないダニ
ーが、コルルにはまぶしく見えた。片や凶暴な別人格の暴走に終止符を打つためとはいえ、悲し
みに浸かりながらも帰る決断をしたコルルが、ダニーには尊く思えた。力になって上げたい、と
思わされた。

「で、その別人格ってのはもう無くなったのか?」
「分からない・・・魔界に戻ってきてからは、まだ一度も変身してないの。消えてなかったらど
 うしようと思って・・・」
うつむくコルルに、ダニーの男としての本能は、愛おしさを感じてしまう。なんとかしてあげた
い、と思わず思ってしまうのだ。
「コルル、もし良かったら・・・その・・・俺のこと、兄貴分と思って頼ってくれていいぞ。」
照れが入ったのか、顔を赤らめ、目線をそわそわしつつ話すダニー。
「う、うん・・・ありがとう、ダニー。」こちらも顔を赤らめるコルル。顔を上げることが出来
ず、目線をテーブルのホットケーキスペシャルに注いでしまう。カフェのホットケーキは、アイ
スやフルーツが豪勢に盛り付けられた、まさにスペシャルなホットケーキ。
その日、関係者全てに取って不運(幸運?)だったのは、燦然と盛り付けられたメロンと、常軌
を逸したメロン馬鹿の存在だった。

「おい!そこの娘!そのメロンを俺によこせ!」いきなりビシィッと指差しながら不当な要求を
突きつけるビクトリーム。
突然のことにコルルはびっくりしたし、ダニーは無礼なこのVの字に怒りを覚え、立ち上がった。

「なに、イキナリほざいてんだ?このVの字野郎!」
「ベリー、シット!俺の名はビクトリーム!華麗なるビクトリーム様と呼べ!」
「誰が呼ぶか!この無礼なVの字野郎!」
度重なるVの字呼ばわりに、プチンと切れるビクトリーム。

「上等だぁ!こうなりゃ力ずくで奪うまでよ!マグルガ!」行き成りぶっ放すビクトリーム。
「あぶねぇ!」とっさにコルルを抱えて飛びのくダニー。
マグルガの光線はダニーをかすめるだけで済んだが、カフェの壁にくっきりとV字の穴を開けた。
「むう、かわしおったかぁ!ならば!」切り離して空中に浮かびあがるV字の頭部。天井付近まで
上がったところでビクトリームは声高らかに言う。
「我が体は美しいVの体形でそこに静止せよ!」素直にポーズを取る体。
「今度は逃がさんぞぉ!アクセル!アクセル!アクセル!」360度回転を始めるビクトリーム頭部。
「な、何をやるつもりだぁ?まさか・・・」
まさか、そこまでやるなんて、と普通の者は思うであろう。ダニーもその例外ではない。その思いが、
ダニーの反応を鈍くした。そして、ビクトリームは遠慮なしの馬鹿であった。
「マグルガァ!!」
四方八方に飛び散るビームの嵐。
「コルル!逃げろっ!」とっさに突き飛ばすダニー。
360度マグルガはカフェの建物を全壊させた。崩れ落ちた天井や壁により、もうもうと埃が舞い上
がる。とっさに飛ばされて建物の外に放り出されたコルルが、埃が収まるにつれ見えるようになった
ものは、完全に崩壊したカフェと、大きな瓦礫の下敷きになっているダニーの姿だった。
「ダニー!」駆け寄るコルル。

ダニーの意識は無い。コルルは一体どうしたら、とオロオロと考えた。
程なくして、一つの考えが頭に浮かぶ。
それは、コルルに取って、苦痛の伴う賭けだ。もしかしたら、別人格が残っていたら、また暴れまわる
のかも知れない。しかし、今、この大きな瓦礫を寄せることが出来るのは、戦闘体形に変身した自分以
外、思いつかなかった。

意を決したコルル。
「ゼルク!」
ミシミシと音を立てて、コルルの体が変化する。戦闘に向くように、体そのものがより成長した大きさ
になる。
以前なら、顔は凶暴な意思があふれ、指先の爪はするどく伸び、そしてコルルの記憶は失われるはずで
あった。ところが・・・
覚悟した結果に反して、コルルの体は大きくなったものの、爪も特に伸びた訳ではなく、どうやら自分
の意思がしっかり残っている。爪はどうやら、自分の意思で自由に伸び縮み出来るようだ。顔は全く
コルルそのまま、ただ強いて言えば、幾分将来の姿となっている感じ。体は以前に比べて女性らしさが
強調されており、ウエストのくびれ、ヒップの艶かしいライン、バストのぷるんとした質感・・・・・・
変身によって衣服は破け、下着だけが辛うじてはちきれそうなバストとヒップを隠している。
これらはそれを見る異性を欲情させるに十分なものであった。もっとも、当の本人はその辺には全く気
づいていない。

コルルは自分の状況に一安心すると、戦闘体形のその怪力でダニーの上に覆いかぶさっている瓦礫を取
り除いた。
あちらこちらがボロボロになっているダニー。コルルはダニーの破れたTシャツをはだけてダニーの体
に触る。考えてみると、コルルが異性の体に意識して触るのは、これが始めてであった。
ダニーの左胸にそっと手を添える。
トク、トク、トクと心臓の音が感じられる。 ホッと一安心したのも束の間、何かダニーの肌に触れている行為を意識すると顔が熱くなってくる感じ
がする。
あわてて、コルルはダニーを揺さぶって呼びかけた。


「ダニー!ダニー!」
しばらくすると、うっすらとダニーが目を開けた。
「ダニー!大丈夫!?ねぇ!?」
「コルル・・・無事だったか・・・良かった・・・」
「ジ・・・オ・・・ルク」ダニーが静かにつぶやく。続いて、ダニーの体に光がみなぎり、ダニーの目
はしっかりと開いた。

急に元気になり、立ち上がるダニー。
「すまねぇな、助けるつもりが逆に助けられちまったみたいだな。」
「ううん、そんなことないよ。ダニーが助けてくれたんじゃない。」瞳に涙を浮かべて、微笑みかける
コルル。
ズキュゥゥゥゥン!
このとき、確かにダニーは、自分の胸のうちで一発の銃声を聞いたのだった。
“か、かわいい!”
さっきまで助けてやらなくちゃ、自分が守ってやらなくちゃ、と思っていた少女は、今、自分の目の前
に魅惑的で官能的な姿で立っている。下着姿のみのそのスタイルは、コルルに女性を意識したダニーに
とって、今では女神に等しい衝撃と、魔女に等しい魅惑の衝動を与えていた。

ダニーがコルルにドギマギし始めたそのとき、少し離れたところで、瓦礫を動かす音がした。
「ちっくしょぉぉう、我が体もダメージを受けた・・・」
起き上がるビクトリーム。頭部はいつの間にか体に合体して元に戻っている。
ビクトリームはダニー達に気がつくと、再び怒りを燃え上がらせた。
「ベリー、シット! お前らまだ生きてたか!ならば今度こそ仕留めてくれる!」
「我が右手にメロンへの感謝を込めて!チャーグル!」ビクトリームの右手の球体に光が灯る。

ビクトリームがまだ何かやりそうだ、と思ったとたん、コルルの胸のうちに、今までに感じたことのな
い、大きなうねりが持ち上がった。
それは、まさしく、コルル初の本気の怒り。
あまりに常軌を逸した目の前のVの字に、コルルは自然と腕を向けて呪文を唱えた。
「ゼルセン!」
コルルの右腕がロケットのように水平に飛び出し、ビクトリームの股間の球体を直撃する。
「うっわぁーお!我が股間の紳士が・・・ウワァーオ・・・」悶絶して白目を剥きかけるビクトリーム。
さらに、コルルは左腕を構えた。人間界では覚えられなかった呪文が、今はなぜか自然に使えるような
気がするのだ。
「ラージア・ゼルセン!」
飛び出した左腕が、瞬時に巨大化してビクトリーム目掛けて飛んでいき、ビクトリームを地べたに叩き
潰す。
いまだピクピクしているものの、ビクトリームが立ち上がることは、流石にもう無さそうだった・・・

「コルル、強いじゃねぇか。」ダニーがニヤッと笑う。
「そんな、こんなことが自分に出来るなんて、思わなかった。」所在無げに微笑むコルル。
「まぁ、その、なんだ・・・」ポリポリと頬をかきながら、ダニーは視線を彷徨わせて、
「今のコルルは・・・何か着たほうがいいな。俺の服で、何か合えばいいけど。」
そう言って、ダニーはコルルを横向きに抱き上げた。いわゆるお姫様だっこという奴だ。
「きゃっ」突然のことに、顔を赤らめるコルル。
「ちょっと我慢してくれ。このほうが早いから。俺の部屋まで一気にいく。」
そういうと、ダニーは持ち前のスピードで一気に走り始めた。


自室に戻ったダニーは、ゆっくりとコルルを、ベッドの上に腰掛けるように座らせた。
「ちょっと待っててくれな。今、着替えを探すから。」タンスの中を探すダニー。微妙にコルルと視線を
合わすことが出来ない。
「別にいいのに。しばらくしたら変身も解けると思うわ。」
「いや、でも・・・その、お、俺が目のやり場に困るんだよな。」ダニーの顔が赤い。
「どうして?」
意を決して、振り向くダニー。
「コルル、お前、今の自分がどう見えるか、良く分かってないだろう。」ダニーは困った表情だ。
それもそのはず、変身したコルルを女性として意識してしまったダニーに取って、今のコルルはあまりに
も魅惑的すぎる。無防備にベッドに腰掛け、両太ももの脇に手を下ろしてベッドの縁をつかんだ格好の
コルル。下着姿のバストがノーガードにさらけ出されており、ダニーの中枢は既に半立ち上体となってし
まっている。
だが、ダニーの思惑と別に、コルルから帰ってきたのは意外な答えだった。
「やっぱり・・・変身した姿って怖いよね?」うつむくコルル。
「い、いや・・・そうじゃなくてだな・・・」
予想外の答えにダニーは面食らう。怖い訳がない。むしろその全く逆だっていうのに、なんでこの子は自
分を責めちまうんだろう・・・
ダニーはコルルの隣に腰掛け、両肩に手を置いてコルルの上体を自分に向かわせた。
「コルル、聞いてくれ!」
顔が上がり、潤んだ瞳がまっすぐにダニーを見つめる。
「今のコルルは、怖いとかじゃなくて、むしろ・・・可愛いすぎて。」
「え?」
「ごめん!俺、マジでコルルに、ほ、惚れちまった!」ダニーは告白と同時にコルルの上体をギュッと抱き
締めた。
「俺と付き合ってくれないか?」耳元で囁く。

コルルはダニーとの体の間に、そっと手のひらをダニーの胸元に押し当てて、体の距離を少しだけ取った。
見上げると、ダニーの真剣な眼差しが見える。
自分の頬が急激に熱くなるのをコルルは感じた。
「私だけの・・・やさしい王様になってくれる?」コルルは思わず口にした。
「ああ!俺がコルルをこれから守るよ。お前だけのやさしい王様になる。」にっこり微笑むダニー。
「ありがとう。うれしい・・・」コルルも微笑み返すと、ダニーの腕に逆らわずに、むしろ自分から胸板
に頬を寄せた。
ダニーの胸板から、彼の心臓の鼓動とぬくもりが伝わるのが心地よくて・・・・・・自然と目が閉じられ
るコルル。
ダニーはそっと腕を動かしてコルルの頭の後ろに回すと、目を開きかけたコルルにやさしくキスをした。


初めてのキス。それは、ダニーにとってもコルルにとっても初めてのことではあったが、なぜか自然と、
お互いに求め合うように唇と唇がふれあい、そこだけが世界の中心であるかのように、最早、他の事は何
も考えられなくて・・・・・・

ベッドに押し倒すような形でコルルの体を寝かせると、ダニーは自らも添い寝のように体を置き、コルル
を抱きしめながらも唇を重ねる行為を止めようとはしない。それどころか、むしろエスカレートする。
唇のせめぎ合いから、今度は舌を使ってコルルの歯をなぞり、少し開いた歯並びから、ちゅるん、と侵入
させる。コルルの舌も自然と反応し、今度はお互いの舌が、絡み合い、なぞりあい、未体験のぬめり合う
感触と、密着した唇による呼吸のしずらさが、ある種の陶酔感となって気持ちが昂ぶってくる。

ダニーはそのままキスを続けながらも、コルルの下着越しにも分かる、ぷるんとしたバストを今一度目で
確認し、左手の中三本の指先を、絹ごしでそっと、その乳房のふくらみに這わせてみた。
ぴくんっ!
思わず体が跳ねるような。でも決して不快じゃない感覚。むしろ、心地よい感覚。
“気持ちいい・・・”コルルには、今自分がされている行為が何かは分からなかった。しかしながら、体
と心、双方から来る感覚に、もっと続けて欲しいと思ってしまう。ダニーの手によってなら、このまま自
分の体がどうなってもいい、とさえ思えてしまう。

表面を触れるか触れないかのところで這い続ける指先が、今度は少し掴むように、乳房に刺激を与える。
「ん・・・」くぐもった反応が漏れ、
「はぁっ・・・はぁん!」たまらず、離した唇から、艶っぽい喘ぎ声。
そのまま動き続ける指先が、今や、下着越しにも分かる、丘陵の小さな突起に狙いを定める。
縁取るかのような円の動き。
突起をより大きくするかのような、根元から上空への駆け上がり。
そして、頂点への渦を巻くような指使いと、やさしく電撃を与えるかのような指圧。
「あっ、あん、あん、あ、あぁぁ、は、はぁぁん!」
遠慮なしに出始めたコルルの嬌声に、ダニーもより一層萌えあがる。
手のひらによる乳房全体への愛撫、人差し指と中指の間で挟んだ乳首転がし・・・・・・

「あぁああああ!あぁ、んん、あ、はあっ、あぅぅんっ、はぁう!あぁあああん!」
ダニーの指捌きに支配され、嬌声を上げる楽器と化するコルル。
シーツの上で、悶え、呻き、時にはせつなげに、時には享楽的に鳴くコルル。
じっとりと汗ばむ体にシーツがまとわりつき、体が悦楽に反応するたびに、少女本来の健康美と、女が本来
持つ魅惑美とが、交互に現れては消え、消えては現れて・・・

大興奮のダニーがコルルの下着をはがし取っていく。
愛肉楽器と化したコルルの体は、さらなる変化をその体に表していた。最高感度の操作つまみと、濡れこぼ
れた新たな音源。
ダニーの唇と舌による右胸の頂点への愛撫と、右手による左胸への愛撫、そして、股間のデルタ地帯へ侵入
する左手。
無毛の柔肌は既に汗やら愛液やらでぬるぬるの洪水地帯と化しており、ダニーの左手はすんなりと割れ目と
肉芽をこすりながら侵攻し、さらには割れ目の中の蜜壺まで到達する。
つぷっ、くちゅる、ぬぷ、ずぷぷぷぷ・・・
中指が蜜壺をノックするかのように軽く押し、穴の周辺を円を描き、さらには穴へ軽く侵入を試み、思った
以上の濡れ具合にそのまま沈み込む。
「あはぁあああああぁぁ!」せつなく声を上げるコルル。
「痛いか?コルル」
「ううん、大丈夫だよダニー。そ、それより・・・も・・・」うっすらと開けた潤んだ目が、ダニーを見つ
める。
「気持ち・・・いいの・・・お願い、もっと・・・して・・・もっとぉ・・・」

ダニーは左腕をコルルの両脚の間にねじいれ、続いて左膝を入れるとそのまま右手も使ってコルルの股を
90度程に開いた。右膝もコルルの左脚をまたぎ、コルルの股の間に完全に体を据えることが出来た。
もはやM字開脚のコルルは、その中心部に神秘の泉を湛えている。
右手で腕枕をし、左手をつっかえて上体をコルルの体に覆いかぶせたダニー。

「痛いかもしれないけど、我慢してくれ。ごめんな・・・」
そういうと、ダニーはギンギンに猛り狂った分身をそっと泉に触れさせた。
「ああぁっ!」「んっ!」同時に喘ぐ二人。さらに侵攻するダニー。
“ぬぷ、ぬぷぷぷ、ぷつ、ぬぷぷぷぷぷ”
体伝いに聞こえたように思えた音。
はぁっ、と息を呑むコルル。
ぎりっ、とダニーの背中に食い込む爪。
全てが同時に訪れて、一旦世界が止まったかのような感覚になる二人。

次の瞬間、コルルの体が淡く光り、爆縮するかのような感覚に二人の意識は弾けとんだ!
「うぁああああ!」
絡みつき、根こそぎ締め上げられるかのような感覚。
「あぁああああっ!」
突き上げ、熱い何かがぶち当たるかのような感覚。

強烈な射精感と同時に締め付けられる痛みを感じたダニーは、自分の腕の下で、コルルの変身がとけたこと
に気づいた。幼い裸体が、自分のモノをぎっちりとくわえ込んでいる様は異様だ。しかし、コルルは全く動
こうとしない。どうやら気を失っているようだった。
とりあえず、モノを抜こうにも痛くて抜けない状態のダニー。
「コルル。頼む、起きてくれ。あ、痛たた、あ痛、コルル〜。頼む、起きてくれぇ〜。」ゆさぶるダニー。

その後、コルルが目を覚まし再びゼルクを唱えたことによって、やっとダニーは一時的に開放された。
そう。あくまでも一時的に、だ。ダニーによって開発されたせいか、元々、素養があったのか、感度抜群の
体に変身するコルルと、何度でもジオルクによって回復するダニー。
エンドレス・カップルの誕生であった・・・



(おまけ)

“右のもの、校舎破壊の罪により、6ヶ月間の休学および放校処分とする”>ビクトリーム
“右のもの、みだりに術を使用した罪により、2週間の謹慎処分とする”>マルス
“右のもの、危険なため、3ヶ月間、椅子を没収とする”>ベルギム・E・O



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