ノワール @642


ガッシュ×パティの続き

ここは魔界の森の奥、ガッシュは今日の特訓はあまり気が進まなかった…何故なら特訓相手がコルルだからだ。
「のうコルル…本当にやるのかのう?」
「ええ。ガッシュの役に立ちたいから…お兄ちゃんとお姉ちゃんに戦い方を教えて貰ったの」
「ウヌウ…」
いくらあのブラゴとシェリーに戦い方を習ったとはいえ、相手がコルルである事に変わりは無い。
「大丈夫よ。おかげで使える術も増えたし、合気道とかも習ったし…」
「分かったのだ…だが私は術は使わぬし、殴ったり蹴ったりもしないのだ。それでよいな?」
「うん…分かった…」
「ウヌ。さあ、かかって来るのだ(ブラゴは全力を出したら殺すと言っておったが、最初からそのつもりは無いのだ…)」
ガッシュにとってコルルはあくまで「絶対に守るべき存在」だからだ。
「ゼルク!」
ゼルクの効力によってコルルの髪が更に伸びて先端が針の様に鋭くなる。戦い向きにリーチを伸ばす為か身長が伸びる。
目元から頬にまるでブラゴの様な模様が出来る。自分の意思で伸縮自在の爪を刃物の様に長く伸ばして身構える。
「さあ、始めましょ…どうしたのガッシュ?顔赤いよ?」
「コルル…服が破れてしまっておるぞ…」
「服?…あっ…またやっちゃった…」
ガッシュの顔が赤くなっていたのは、変身によってコルルの服が破けて下着姿になってしまったからだった。
大き目の服で隠していた豊満なバスト、細いウェスト、丸みを帯びたヒップ、むちむちした太腿、すらりと伸びた脚が露になる。
「ウヌウ…コルル、代わりの服は無いのかのう?」
「無いの…でも、ガッシュには見られてもいいから平気よ…だから気にしないで…」
「いや、しかしのう…」
ゼルクの効果で身長が伸びガッシュより背が高くなった為、コルルの胸が丁度ガッシュの顔の辺りにある。
ブラジャーに包まれた豊満な胸を間近で見てしまい、ガッシュは益々顔が赤くなりながらもコルルの顔を見上げる。
「わ、私達将来…結婚するんだから…いいでしょ?それにもう一緒にお風呂入ったり、寝たり……えっちもしてるし…」
小声とはいえ、大胆な事を言ってしまったのに気付いてコルルは顔を真っ赤にして両手で顔を覆い隠す。

「ウヌ…そ、それもそうだのう…分かったのだ。特訓するのだ」
「う、うん…じゃあ、行くよ…」
コルルはガッシュからかなり遠くに離れて距離を取った。ガッシュにはコルルが術で仕掛けて来るのがすぐ分かった。
「ゼルセン!」「ヌッ!」
コルルの両腕がロケットパンチになって飛んで来たが、ガッシュは2発共簡単に避けた。
「ゼラルセン!」「ヌオッ!」
コルルの両手の爪がミサイルのように乱射して飛んで来たが、またもガッシュは簡単に避けた。
「ラージア・ゼルセン!」「ヌウウッ!」
コルルの手が超巨大なロケットパンチになって飛んで来たが、ガッシュは真正面から受け止めた。
「ヌアアアア!」
ガッシュはロケットパンチをコルルに向けて投げつけ、その腕の影に身を隠して一気に接近して来た。
「ガッシュの姿が見えない…腕を元に戻さなきゃ…」
コルルは慌てて両腕を元に戻したが、ガッシュはもうすぐ近くにまで接近していた。
「捕まえたのだ!」「きゃっ…」
ガッシュはコルルの腰に手を回してしっかりと抱き締めた。一応組手なのにコルルは全く抵抗しない。
「捕まっちゃったね…でも、どうしてこんな方法を思いついたの?」
「ウヌ、思いついたのではないのだ。キッドと戦った時にしたから覚えてたのだ」
「そうなんだ…」
ゼルセンとラージア・ゼルセンが使えるキッドと戦った事があるガッシュは清麿から習ったこの戦法を覚えていた。
もっともキッドの時は捕まえた後、清麿の指示で思いっきり遠くにブン投げたのだが。
「それよりガッシュ、苦しくないの?」
「ウヌ、大丈夫なのだ…とっても気持ちいいのだ…」
抱き締めた時からガッシュの顔はコルルの胸の谷間に埋まっていた。そのままの状態でガッシュはコルルの顔を見上げる。
ガッシュは接近する事に頭が一杯で、今はコルルの方が背が高くなっていた事をすっかり忘れていた。
「それよりコルル、新しい術を2つも覚えたのだな…」
「あと2つあるの…見たい?」
「ウヌ、ぜひ見たいのだ!」
「じゃあ、危ないから遠くに離れててね…」
ガッシュは言われた通りにコルルから遠くに離れた。

「ジオ・ラ・ゼルド!」
コルルの両手が地面に触れると、地面から沢山の巨大な爪が現れコルルの周り全体を取り囲んだ。
「この爪で相手の攻撃を防御出来るの」
「オオ、盾の呪文なのだな!」
「ゼルルド!」
「凄いのだ!空を飛んでおるのだ!」
コルルは身体を宙に浮かせ、そのままガッシュのすぐ近くへ着地した。
「この術を唱えると空を飛べるようになるの。それに、この姿になるとね…」
「ヌオッ!?」
コルルはガッシュの腰に手を回して軽々と抱き抱えた。その体勢はまるで母親が子供を抱っこしている様だった。
「力がとても強くなるから、こんな事も簡単に出来るんだよ…いつもと逆だね…」
「ウヌ…そうだの…」
いつもはガッシュがコルルをお姫様抱っこの体勢で抱き抱えるので、非常に珍しい事だ。
「こ、コルル…おっぱいが当たっておるのだ…」
「もう…ガッシュったら…」
コルルが抱き締めるので、豊満な胸がガッシュの胸板に当たって形を変えている。
顔を赤くするガッシュを可愛いと思いながら、コルルはガッシュをそっと降ろした。
「ウヌウ…それにしてもコルル…どうして背まで伸びたのだ?」
ガッシュはゼルクの効果で身長が伸びたコルルの身体を改めて見つめる。本来は自分の方が背が高いので不思議な気分だ。
「分からないの…『相手より体が大きい方が接近戦では有利だ』ってお兄ちゃん言ってたけど…」
10年前、背の低さがほぼ唯一の弱点だったブラゴが言うと物凄く説得力がある。
「コルル、ちょっと爪を伸ばしてみるのだ」
「えっ…?う、うん…」
コルルはガッシュから離れて両手の爪を伸ばした。長く鋭い爪はまるで刃物の様だ。
「接近戦なら、その爪と腕の長さを足すと敵より遠くから攻撃出来るのだ。これなら敵はうかつに近寄れぬのだ」
「あ…そうか…子供の頃なんて比べ物にならないね…」
コルルは自分の意思で伸縮自在な爪を元の長さに戻す。

「だから背が高い方がよいのだ…コルルは術で大きくなれて羨ましいのう…」
「そ、そうかな…?」
コルルはまだ今一つ納得していない様だ。いくら師匠達が凄くても、彼女は戦いに関しては素人なのだから仕方が無い。
「コルル、合気道も習ったのだったな?…私を投げてみるのだ」
「ええっ!?」
「遠慮は要らぬぞ。私は頑丈だから平気なのだ」
「わ、分かったわ…えいっ!」「オオッ!?」
コルルはガッシュを合気道の技で投げ飛ばした。
「ガッシュ、大丈夫?」
「全然平気なのだ。体が大きい方が相手より先に掴みやすいから組手の時も有利なのだ…分かったかのう?」
「うん…でも、せっかく教えて貰ったのに術と技のどちらかしか使えないの…」
「ウヌ?…もしかして術を使うと服が破れてしまうからかの?」
「うん…お姉ちゃんは下着姿になっちゃうのを心配してくれるけど、お兄ちゃんそんな事全然気にしないから…」
「コルル、お主が術を使ってからまた予備の服を着れば良いのではないか?これなら術も技も使えるのだ!」
「あっ…凄いねガッシュ…」
「イヤ…私が凄いのではなくて…何故コルルもブラゴもシェリーも爺殿も気付かなかったのだ?」
「お兄ちゃんは『術だけで充分だ』、お姉ちゃんは『いいえ、技よ』って言って結局いつも通りケンカになっちゃったから…」
「ウヌウ…それなら納得なのだ…」
ブラゴとシェリーが夫婦喧嘩を始めると、避難してほとぼりが冷めるまで放って置くのが一番良い方法だ。
その為、そんな簡単なアイディアを思い浮かべる暇も無かった様だ…。
「ガッシュ、今日は色々教えてくれてありがとう」
「あれ位お安い御用なのだ。それよりもコルル…」
「あっ…ガッシュ…」
ガッシュは立ち上がって、コルルの腰に手を回して抱き締めた。

豊満な胸に顔を埋めながら丸みを帯びたヒップを揉む。完全に大きくなったモノをむちむちした太腿に押し付ける。
コルルの下着姿はガッシュには刺激が強過ぎた。シェリーが術を使うのを反対するのが良く分かった。
「スマヌのだコルル…もうガマン出来ぬのだ…夜まで待てないのだ…」
「いいの…私も待てないから…」
それを聞いたガッシュは大きなマントを脱ぎ、地面に敷いてコルルをマントの上に優しく押し倒してキスをした。
「んっ…ふうっ…んんっ…」
ディープキスをしながらコルルの胸を揉む。豊満な胸はブラジャー越しでも温かくて柔らかい。
「はあっ…ガッシュ…」
「コルル…」
ガッシュはキスを止めて服を脱いで裸になり、コルルの下着を脱がせてから覆い被さった。
「コルルのおっぱい…気持ちいいのだ…いい匂いがするのだ…」
「ふあっ…あんっ…あううっ…ふあぁぁっ…」
露になった豊満な乳房に顔を埋めて頬擦りしながら揉んだり、桃色の先端を指でこねたりする。
「ああっ…おっぱい…もっと吸ってぇ…」
「ウヌ、勿論なのだ」
谷間から顔を離して、硬くなった乳首に吸い付く。舌で転がし、時々甘噛みしながら左右の乳房を交互に愛撫する。
「コルル、おっぱいで挟んで欲しいのだ…」
「いいよ…」
ガッシュは乳首から口を離して、自分のモノを豊満な乳房に挟み込ませた。
コルルが乳房に手を添えてモノを包み込むと、胸の谷間からモノの先端だけが見える。
「そのままチンチンを口にくわえて…舐めて欲しいのだ…」
「うん…」
コルルがモノの先端を口に含み舌で舐め始めると、ガッシュは腰を動かし始めた。
「ふうっ…むむう…んんっ…」
コルルはガッシュに気持ち良くなって貰いたい一心で愛撫する。豊満な乳房の感触と舌での愛撫がガッシュを刺激する。
「ヌアアッ…コルル…出る…のだ…ヌウッ…!」
「んううっ――!!」
快感に耐え切れず限界を迎えて口内に放出されたガッシュの精液をコルルは懸命に飲み干した。

「コルル…大丈夫かの?」
「うん…平気よ…だから…もっとして…」
「ウヌ…」
ガッシュの指がコルルの秘所に入ると、割れ目から愛液が溢れ出て来る。
「凄く濡れておるのだ…」
「ふああっ…」
ガッシュは指を秘所から引き抜き、コルルの脚をM字型に開いてすっかり濡れている秘所に顔を近付けて舐め始める。
「やっ…はあっ…くうんっ…」
ガッシュが秘所を舐める度に、コルルは身体をくねらせる。ガッシュはさらに愛撫を続ける。
「ガッシュ…もうだめ…早く…来て…」
「コルル…」
ガッシュはコルルの秘所の割れ目にゆっくりと少しずつ挿入していった。
「ふううんっ…くうっ…」
「ヌアアアッ…気持ちいいのだ…」
突く度に快感に酔うコルルの顔と喘ぎ声、揺れる豊満な乳房、モノを締め付けて離さない膣内…全てがガッシュを刺激する。
ゼルクの効果で身体が大きくなっているので、コルルの乳房がガッシュの顔の間近にある。
「コルル…」
「ガッシュ…ああっ…」
ガッシュはたまらなくなりコルルの胸の谷間に顔を埋めた。豊満な乳房がガッシュの顔を包み込む。
コルルは両手でガッシュの頭を優しく抱き締めた。
「コルル…太腿で私の体にしがみ付いて欲しいのだ…」
「こ…こうかな?」
「それで良いのだ…ヌウウッ…気持ち良過ぎるのだ…」
コルルは言われた通りに太腿をガッシュの胴体に絡み付かせてしがみ付いた。

豊満な胸で顔を挟み、むちむちの太腿で胴締め、温かい膣内でモノを締め付けるという3点同時攻めがガッシュを刺激する。
コルルの身体に包み込まれる快感が、ガッシュの腰の動きを激しくする。
「はああっ…ガッシュ…気持ちいいよぉ…もっと…もっとして…」
「アアッ…コルル…」
今のガッシュにはコルルの喘ぐ声と腰を動かす度にする淫らな音しか聞こえない。
「コルルッ…ヌアアアッ…!!」
「ああっ…ガッシュ…はあああっ…!!」
2人は同時に絶頂を迎え、それと同時にガッシュはコルルの中に放出した。
「ス…スマヌのだ…聞きもせずに中に出してしまったのだ…」
「気にしないで…ガッシュ…」
2人は繋がったままの状態で抱き合っている。ゼルクの効果が切れて、コルルは元の身長に戻っていた。
ガッシュはコルルの胸の谷間に顔を埋め、コルルは脚を離してガッシュの髪を愛おしそうに撫でながら快感の余韻に浸っている。
「ガッシュ…たまには私とも特訓してね…」
「ウヌ…」
「じゃあ、ガッシュの特訓の時は下着姿でするからね…」
「ウヌウ!?」
コルルの大胆発言にガッシュは驚いた。

「こ、コルル…?」
「私はガッシュには見られても平気だから…ダメかな?」
「だ、ダメじゃないのだ…それに…」
「それに?」
「私より背が高いコルルも好きなのだ…」
「ガッシュ…」
「そ、そろそろ帰るのだ…」
「うん…」
ガッシュはコルルの中から自分のモノを引き抜いて、服を着る。コルルは下着を身に付ける。
「あっ、私の服…破れていたんだっけ…どうしよう…」
「ウヌウ…いい手があるのだ!」
ガッシュは自分のマントの付いた草や土を手で払ってからコルルに着せた。
「これで大丈夫なのだ」
「ありがとう…」
ガッシュはコルルをお姫様抱っこの体勢で抱き抱えた。
「それにしてもコルル、お主強くなったのう…」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんのおかげだよ…」
「コルルが頑張ったからなのだ」
「ありがとう、ガッシュ…」


おまけ〜ブラゴさんちの家庭の事情〜
ブラゴとシェリーは円形のテーブルに向かい合って座り、爺はシェリーの傍らに立っている。
「コルル、ガッシュの特訓相手務まっているかしら…」
「オレ達が鍛えてやったんだ、少しはマシだろう」
「そうね。ガッシュがコルル相手に本気出せる訳ないし…惚れた弱みって奴かしらね」
「違うな。オレが全力を出したら殺すとガッシュに言ったからだ」
「そんな事言う必要無いでしょ!全く貴方って人は…」
「フン…念には念を入れただけだ」
「そんな念は入れないで!」
「そ、それにしてもあのコルル様が戦い方を教えて、なんて言い出すとは思わなかったですな」
嫌な予感がした爺は強引に話題を変えた。
「そうね…私、聞いた時は本当に驚いたわ…」
「ああ…10年前のあの時とは大違いだ…」
「あの時の貴方の怒りは本当に凄かったわね…」
「はて…10年前、ですか?確か…お2人がガッシュ様とコルル様で出掛けられた時の事ですかな?」
「ええ、そうよ。実はコルルとガッシュには…特にコルルには内緒にしておきたい事があるの」
「それは興味深いですな…宜しければお教え下さいませんか?」
「勿論よ。これは当時私も一緒にいたから良く覚えているわ…」
シェリーは10年前の事を思い出しながら、爺に話し始めた。

10年前、ブラゴとシェリーとガッシュとコルルはピクニックに出かける事になった。いわゆるWデートと言う奴だ。
「Wデート?」
「そうよ。これならお兄さんとお姉さんも堂々と一緒について行けるでしょ?」
「堂々とって…しおりねーちゃん…」
「2人共コルルの事が心配でしょうがないのよ…気持ちは良く分かるわ…」
Wデートを提案したのは勿論しおりだ。恋愛事に疎いブラゴとシェリーとガッシュの辞書にそんな文字は無い。
「フン…余り気が進まんな…」
「貴方がいないとWデートと言うのにはならないのよ…全くもう…」
シェリーに説得され、最初は気が乗らなかったブラゴも同行する事になった。
「オオ、凄く大きな花畑だのう!」
「うん…それに凄く綺麗…」
「当日、4人は無事に目的地の花畑に辿り着いた。無邪気に喜ぶコルルとガッシュを見てシェリーは微笑む。
「2人共楽しそうね…来て良かったでしょう、ブラゴ?」
「フン…」
花の冠を作ってガッシュに被せているコルルを遠くから離れて見ているブラゴとシェリー。
シェリーは座っていて、ブラゴはシェリーの隣で寝そべっている。遠くから見ると年齢差がある為か、夫婦と子供2人に見えなくも無い。
「平和ね…こんな日が来るなんて、王を決める戦いがあった頃には考えられなかったわ…」
「オレは少々退屈だがな…まあ王宮には強い奴が多いからまだマシだが…」
「退屈って…貴方やガッシュが頑張っているからこの魔界は平和なのに…もう…」
「あのバカ王には王妃もオレ達が何とかしてやらんとな…いっその事コルルをくれてやるか…」
「私もコルルが一番王妃に相応しいと思うわ…そうなると、ガッシュは私達の弟になるのね…」
ブラゴとシェリーはやさしい王様と、将来彼の妻にしたい自分達の妹を見つめた。
「きゃあっ!」
しかし、平和な時間は簡単に壊された…突然地面から現れた影にコルルのスカートがめくられたのだ。

犯人はサルとウサギを足して2で割った外見をした魔物、モモンだ。足元を溶かし地面を潜る術、アグラルクを使用した犯行だ。
「うっ…ぐすっ…ふえっ……うえ―――ん!!」
スカートをめくられたコルルは恥ずかしさの余り大声で泣き出した。ガッシュとシェリーは慌ててコルルに駆け寄る。
このコルルの反応にさすがのエロザルも良心を痛めたその時、モモンの持つ「魔物を感知出来る能力」が凄まじい殺気を感じ取った。
「てめえ…覚悟は出来てるだろうな…」
「キッ!?キ―――!!」
モモンは殺気の持ち主…怒りの形相で睨みつけるブラゴを見て、耳を伸ばして飛ぶ呪文ミンフェイ・ミミルグで空を飛んで逃げ出した。
「ビドム・グラビレイ!」「キ―――!」
しかし強力な重力波で叩き落されモモンは地面にめり込んだ。ビドム・グラビレイのダメージで立つ事すら出来ない。
ブラゴは「ゾフィスの奴もこうやって叩き落してやれば良かったな」と思いながらモモンに近付いた。
「てめえ良い度胸してやがるな…オレから逃げられるとでも思っていたのか?」
「キ、キキキキキキ……」
かつてモモンはティオに対してスカートめくり等のセクハラ行為を繰り返した事がある。
それによりティオの怒りが頂点に達し、怒りと憎しみを攻撃力に変える術チャージル・サイフォドンで倒された。
今のブラゴの顔は怒りが頂点に達したその時のティオとは比べ物にならない程怖く、モモンは恐怖の余り腰を抜かしてガタガタと震える。
「ギガノ・レイス!」「キキ―――!」
ブラゴの怒りを込めた重力弾が至近距離でモモンに炸裂した。

ブラゴがモモンを一方的に叩きのめしているその頃…シェリーとガッシュはコルルを慰めていた。
「ガッシュ、コルルを連れて先に屋敷に帰って」
「ウヌ、分かったのだ!…ところでシェリーはどうするのだ?」
「私はブラゴを止めるわ…今のブラゴを放って置いたら危険過ぎるから…」
「ブラゴを!?一人で大丈夫なのか…?」
「私の事なら心配しないで。コルルの事、頼むわね」
シェリーはまだ泣き止まないコルルの頭を優しく撫でる。
「ウヌ。さあコルル、ここから離れるのだ」
ガッシュはコルルをおぶって屋敷に向かって走って行った。シェリーは2人が遠くへ離れたのを確認してからブラゴの隣に歩み寄った。
「全部聞こえていたぞシェリー…オレを止めるだと?」
ブラゴはモモンの耳を掴んで何度も地面に叩きつけながら、地獄耳でシェリー達の会話を聞き取っていた。
モモンにはシェリーが悪魔に殺されそうな自分を助けに来た救いの女神に見えた。
「ああ、あれは嘘よ…コルルとガッシュをここから離れさせる為のね」
「ホウ…で、本当の目的は何だ?」
「聞くまでも無いでしょう…そのサルが許せないのは貴方だけじゃないわ!」
「キッ!?キキ―――――!!」
シェリーはモモンを睨み付け、フレイルで渾身の力を込めて殴った。モモンにとって彼女は女神ではなく…死神だった。
「ブラゴ、一応ガッシュの友達だからディオガ・グラビドンとバベルガ・グラビドンは止めておきましょう…」
「言われなくてもこんな雑魚に使う必要は無い…だが、二度とこんな真似が出来んようにしてやる…」
黒尽くめの悪魔と白装束の死神を前に、モモンは恐怖で震えるだけだった…。
「オレを敵に回した事を後悔しやがれ!!」
「私の可愛い妹を泣かせた罪は重いわよ…覚悟しなさい!!」
「キ――!!キキキ――――――――ッ!!!」
ブラゴは術と拳で、シェリーはフレイルと蹴りでモモンを完膚なきまで叩きのめした。

「……と言う訳でそのサルとウサギを足して2で割ったような顔をした魔物を私達で成敗したの」
話し終えたシェリーは喉の渇きを癒す為に涼しい顔で紅茶を飲む。
「(そういう事だと思ってましたよ…)獅子はウサギを狩るにも全力を尽くすと言う言葉がありますが…少々やり過ぎではございませんか?」
シェリーの話を聞き終えた爺はあまり驚いていない様子で素直に感想を述べた。
「当然の報いよ…一応ガッシュの友達だからあの程度で勘弁してあげたのよ」
「ジジイ、この事は他言無用だ。話したらてめえの命は無えぞ…」
「承知いたしました。ご安心下さい、私は口が固い方ですから」
普段は何だかんだ言って夫婦喧嘩しているが、妹思いな主人夫婦に爺は深々と頭を下げた。
「あの頃と違ってコルルも自分の身を守れる位には強くなったし…ねえブラゴ、そういえばコルルの新しい術って殆ど飛び道具ね」
「それがどうかしたのか?」
何事も無かったかのように別の話題を持ち出すシェリー。

「まあ肉体強化や盾の術があるからバランスは取れているわね。それに比べて貴方の術って飛び道具ばかりね…」
「フン…オレには肉体強化も盾も必要無い…」
確かにトレーラーが全速力で突っ込む速度に匹敵する威力のパンチが繰り出せ、生身でディオガ級の術に耐えられるブラゴには必要無い。
「術が無くても最初から出し入れ自在の鋭い爪があるし…(10年前と違って今じゃ私より背が高いからリーチも長いしね…)」
ブラゴの身長の事は「今はオレの方が上だ」と見下ろしながら言い返されるのが簡単に想像出来るので言わないシェリーだった。
「殴った方が威力があるから殆ど使わんがな…」
ブラゴの爪は非常に鋭く、下手な刃物など比べ物にならない切れ味だ。
「つくづく貴方って滅茶苦茶ね…本当にコルルが貴方に似なくて良かったわ…」
「結局そこに行き着くのかてめえは!長い前振りするんじゃねえ!」
「仕方ないでしょ…私未だにあの子が魔物で、しかも貴方の実の妹だという事が信じられなくなる時があるんだから…」
「フン…確かにあいつがオレの妹だと知って驚かなかった奴は一人もいなかったな…お前も含めてな」
「驚かなかった人がいるものなら会ってみたいわ…ねえ、爺もそう思わない?」
「ええ、私も驚いた一人でございますから…そのような方がいらっしゃるのならぜひお目にかかりたいものですな」 
「でしょう?」
「てめえら…」
爺が会話に加わった為か、ブラゴが呆れてしまった為か、どっちにしても珍しく夫婦喧嘩に突入しなかった一日だった…。


終わり。


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